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外国人アーティストのコンサートや舞台でのMC、はたまた古典芸能の鑑賞時に「何だかよくわからない」せいでモヤっとしたことはないだろうか。

その時のことを思い出してほしい。もし自分が聴覚や視覚でハンディキャップを持っていたら? 目や耳に入る情報、共通言語などが乏しい条件で、演劇や映画といったエンターテイメントを楽しむにはどうすればいいのか。

その答えの一つが、動画配信プラットフォーム「THEATRE for ALL」にある。

「THEATRE for ALL」は、演劇・ダンス・映画・メディア芸術を対象に、日本語字幕や音声ガイドのほか、手話通訳、多言語対応などを施した日本初の動画配信サービス。現在オリジナル作品を含む映像作品約30作品、ラーニングプログラム約30本を配信している。コロナ禍で舞台や劇場に通えなくなった人、障害や疾患がある人、子供、母国語が日本語以外の人、また、芸術に対して「難解さ」がバリアとなって馴染めなかった人などに対し、開かれた劇場を目指している。

観客だけではない。コロナ自粛により、多くのコンサートや舞台が中止、キャンセルとなり、仕事が突然なくなった、音響、照明など舞台関係者の離職をくい止めるという側面も持つ。

コンテンツを見てみると、朗読劇では字幕と音声ガイドが、映画では英語、中国語が、オンライン授業ではバリアフリー字幕と手話があるなど、作品によりサポートの方法は様々だ。

「コロナで長期的な見通しが立たない中、どうすればいいのかを代表の中村(Precog代表の中村茜)と話し合い、どう生き延びていくか、この状況の中だからこそ発信したいことは何か考え、もともと手弁当で配信事業を立ち上げようとしていたところ、文化庁の『文化芸術収益強化事業』に採択され、初年度の配信コンテンツ制作やさまざまなリサーチプロジェクトを走らせることができました」

そう語るのは、「THEATRE for ALL」を配信する制作会社Precogの執行役員であり、事業プロジェクトの統括ディレクターである金森香。2019年には日本財団主催「True Colors Festival –超ダイバーシティ芸術祭–」のディレクターを担当するなど、コロナ前からエンターテイメント界にD&Iを、マイノリティも楽しむための活動を続けている。

「THEATRE for ALL」は、ただ作品を発信するだけではない。作品を感じたり、解釈したりする手助けとなる「ラーニング」や「体験型ワークショップ」も配信。これらにより、健常・障害を問わず視聴者の理解を促し、作品の世界へと誘うことができる。金森はこう語る。

「オンラインだからこそ、何回も繰り返し観る事ができ、ラーニングなどを通じて行ったり来たりして楽しめる。バリアを取り除く手助けになります」

いつでも、どこでも、そして誰もが芸術に親しめる、オンライン上のアートセンター。「我々のサービスを通じて、多様性社会の素晴らしさを感じたり、向き合うべき課題を知っていただきたいですね。これからは作品作りに、バリアフリー、アクセシビリティという概念がスタンダードになっていくことになる。アフターコロナの時代には、よりその価値が強くなっていくと思います」

金森香◎precog執行役員/広報・ブランディングディレクター。出版社リトルモアを経て、2001年ファッションブランド「シアタープロダクツ」を設立し、2017年まで取締役。2010年NPO法人DRIFTERS INTERNATIONALを設立し、芸術祭の企画運営・ファッションショー・出版企画などをプロデュースする。2019年日本財団主催「True Colors Festival – 超ダイバーシティ芸術祭 – 」のディレクターを担当。2020年にprecogに参画し、アクセシビリティや広報・PR、ブランディング事業等を担当。

文=石澤理香子

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