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地域経済を活性化させるために、何が必要なのか。それを実現するためにどのようなDXが求められるのか。銀行業務統合のプラットフォームを提供し、金融機関のDX改革を進めるnCinoが、世界規模での競争環境の激変やウィズコロナに備えた新しい経営基盤づくりや変革への選択肢、アプローチの重要性を伝えるオンラインイベントを2021年2月4日に開催した。

「日本の未来を左右する地域経済の伸びしろ」「地域経済活性化を成功させた取り組みの実例」「地域経済をさらに飛躍させるために必要なDX」の3つをテーマに、京都銀行専務取締役の阿南雅哉、一般財団法人こゆ地域づくり推進機構代表理事の齋藤潤一、nCino代表取締役社長の野村逸紀と、モデレーターを務めるForbes JAPAN編集長藤吉雅春の4名によって行われたパネルディスカッションを誌上再現する。


京都銀行と宮崎・新富町の「地域商社こゆ財団」をゲストに


藤吉雅春(以下、藤吉) みなさんこんにちは。Forbes JAPAN編集長の藤吉と申します。このセッションは「地域経済活性化に向けた銀行DX貢献の可能性」と題しましてお送りします。まず、登壇されるみなさまから一言ずついただきます。

野村逸紀(以下、野村) nCinoの野村です。弊社のミッションは、「融資ソリューションを金融機関にお届けする」ことです。法人・個人向けの融資、口座開設、顧客向け非対面チャネルといった主要な銀行業務をカバーし、効率性や収益の向上、顧客満足度向上などを促す銀行業務統合のプラットフォームを提供しております。現在、世界で1,200以上の金融機関が活用していますが、大きな目標としては「金融機関の融資の変革を通じ、よりお金が回る経済に貢献する」を掲げています。もっと言えば、すべてのみなさまの生活を豊かにすることに貢献したいと思っておりまして、本日はその大目標を実現するためのアイデア、知見を多くのみなさまと共有したいと思っております。

阿南雅哉(以下、阿南) 京都銀行で営業部門を担当しております阿南でございます。営業店に加え、コンサルティング業務および創業支援も業務分掌となっております。少し弊行のことをご紹介させていただきますと、1941年、ちょうど80年前に、現在NHKの大河ドラマ「麒麟がくる」で話題になっております京都府福知山にて4つの銀行が合併し、丹後の「丹」に平和の「和」と書く丹和銀行という名前で設立されました。その10年後に京都銀行へ商号変更し、さらに2年後に京都市内へ本店を移転しました。現在の店舗数は京都府を中心に東京・愛知なども含め174店舗ございます。預金貸出金は、地方銀行の中ではだいたい9番目ぐらいの位置付けにあります。

齋藤潤一(以下、齋藤) 宮崎県新富町の齋藤と申します。もともとアメリカのシリコンバレーで働いていたのですが、東日本大震災をきっかけにビジネスで地域課題を解決する起業家としての活動を始めました。2017年に「稼げる地域商社 こゆ財団」を設立したのですが、その名のとおり地域で稼げるということをテーマに、1粒1,000円のライチをブランド化したり、特産品を活用したふるさと納税で累計50億円ぐらいを集めたりして、国の地方創生の優良事例に選ばれました。その地域経済の生態系を基盤にして、現在、宮崎県では農業を中心にしたベンチャーがたくさん生まれ、地方銀行と連携をしながら農業ロボットベンチャーをつくっているところです。


(左上)京都銀行専務取締役 阿南雅哉、(右上)一般財団法人こゆ地域づくり推進機構代表理事 齋藤潤一、(左下)Forbes JAPAN編集長 藤吉雅春、(右下)nCino代表取締役社長 野村逸紀

地域イノベーションと地方銀行の関係


藤吉 みなさん、ありがとうございます。では、ディスカッションを進めていきたいと思います。最初のテーマは「強い地域経済をつくるには」です。まず、京都銀行の阿南さんから、地方銀行が担う地域経済における役割をお聞かせください。人口減少や高齢化、事業承継の問題など地域の厳しい環境を踏まえて、いかがでしょうか。

阿南 京都銀行の歩みを含めてお話をさせてください。1953年に京都市に本店を移したと申し上げましたが、当時は繊維業界が花形で、後発の銀行である当行はなかなか新規参入ができない厳しい状況でした。そこで、町工場を中心とした製造業への新規開拓に注力し、それらの企業が現在大きく成長してきました。そうした企業からお話をいただいて株式を取得し、2020年9月末現在で地元企業を中心に約8,000億円の株式評価益と大きな配当収入を得ているのが、ほかの金融機関とは少し異なるところかもしれません。これはいまで言う投資金融の走りであり、ベンチャー支援が当行のカルチャーとして受け継がれてきていると感じています。

金融全般としては、高度成長期以降、企業に融資を行うことが成長支援とされ、融資残高を増やせば銀行も収益計上につながるビジネスモデルでした。しかし、リレーションシップ・バンキング、地域密着型金融、地方創生、地域経済活性化と、地銀に求められる役割も環境とともに、いま大きく変化してきています。当然、金融の担い手として円滑な資金供給を第一としつつ、事業法人先についてはライフステージ、創業、成長、承継、再生、廃業に応じた相談業務とサポートを、個人分野では人生100年時代と言われるなかで、個々人のお客様に応じた将来設計のアドバイスを、地域においては町づくり、あるいは公共との連携、地場産業の振興と、非常に幅広い役割が求められていると感じています。

一方で、マイナス金利の環境下においてストック収入以外の収益につながるサービスを模索しなければなりませんし、日本の抱える高齢社会、事業承継の対応も求められています。加えて従来型の銀行業務以外のカテゴリーとなるM&Aや承継、相続などコンサルティング業務も大きく広がっていますので、そういう専門分野の人材育成も課題と感じております。


 
藤吉 次に、こゆ財団の齋藤さんにお聞きしますが、地域からイノベーションを推進する立場から見て、地方銀行の役割についてどうお考えになっていますか?

齋藤 僕は、いま地方にもっとも求められるのは起業家精神だと思っています。起業家というよりも、その精神をもった人をどれだけ育成できるかが非常に重要です。そのインフラであり、セーフティネットを整備するのが地方銀行の役割ではないでしょうか。そういう意味では、nCinoの成り立ちは非常に興味深いですね。「商業貸付の手続きが非効率で時間がかかる」と考えていた銀行員と起業家がタッグを組んで、その効率化に取り組んだと聞いていますが、そうやって小さな経済やビジネスをたくさん増やし、集合体にしていくことが非常に重要だと思っています。そのイメージをもって、地方銀行と地域の産業が手を組んで活性化していかなくてはなりません。



地域経済には「伸びしろしかない」


藤吉 こゆ財団は「世界一チャレンジしやすいまちをつくる」をビジョンに掲げていますね。このフレーズは非常に面白いと思っていますが、地元の金融機関の方々がそういったチャレンジしやすい環境やカルチャーを生み出す役割を果たしているのでしょうか?

齋藤 結論としては、「一緒にやっている」です。僕はこゆ財団の前に10年間NPOの活動で全国の地方自治体を見てきて、日本にもっとも足りないのは「チャレンジ精神」や「チャレンジを奨励する文化」だと思ったのです。ですから、その逆張りとして、チャレンジの総量が増えればそれだけ成功率も増えると考えました。こゆ財団は、現在地元の信用金庫などの金融機関と連携しながら活性化を促していますが、中間支援団体として「チャレンジしやすい社会をつくる」というところで産業と金融機関をつなげているからこそ、スピード感をもって効率的に進められていると思っています。

藤吉 阿南さんにお聞きしますが、京都銀行も「京銀輝く未来応援ファンド」という形で、齋藤さんがおっしゃるようなチャレンジ精神やアントレプレナーシップを後押しする取り組みをかなり早い段階からされていると思います。そういった活動を通じて、地域経済にはまだまだ伸びしろがあるとお考えでしょうか。

阿南 伸びしろをどこに、どの程度見出すかは非常に難しい問題ですが、地域のさまざまな取り組みを多くの人に知ってもらい、そこに付加価値を感じる人との接点を見出していくことが重要だと思っています。われわれ地域の金融機関は、その接点をいかに拾い上げて広くお伝えし、適切につなげていくか、橋渡し的な役割が求められていることのひとつだと考えています。

藤吉 齋藤さんは宮崎県のご出身ではありませんが、外部の視点から伸びしろに気づく点は多いのではないですか?

齋藤 僕は「伸びしろしかない」といつもいろいろなところで言っていまして、伸びしろだらけだと思っています。特に地方では、間違いなく第一次産業の伸びしろが大きく、もっとも必要とされているのがDXです。デジタル化で効率化が進み収益が上がっていく。いまがまさに転換期だと僕は思っています。銀行とわれわれは農業用ロボットで課題解決に取り組んでいますが、これもDXです。地方の第一次産業は、DXの推進で何十倍にも伸びる余地があると確信しています。

藤吉 Forbes JAPANでもDXの視点で取材をしていくと、まだまだやれることだらけだと感じていますが、実際に行動に起こしていくうえでの地域ゆえの課題は何でしょうか?

齋藤 これまでは、テクノロジーとビジネスを理解している人が少なかったのが最大の課題でした。しかし、いまは政府が移住を促進していたり、コロナ禍で時間や場所にとらわれずリモートで働けるようになってきたりしたことで、DXを大きく推し進めるチャンスが到来していると感じています。

藤吉 nCinoさんはDXの専門家ですが、その立場から一連の話をどう受け止められますか?

野村 改めて気づいたのは、齋藤さんのような方が挑戦しやすい環境づくりをすることの大切さだということです。一方で、チャレンジには金融機関の支援が必要ですから、正しいタイミングで正しい融資が、正しいところへ届くというプロセスをしっかりと踏むことが重要だと思いました。これから人口が減っていくなかで、金融機関がいかに効率的に正しく融資を届けるか。ベンチャー支援やDX推進で変わっていくところに、経営資金をいかに生み出し、テクノロジーの力をどうもち込んでいくかが、われわれnCinoの使命だと強く感じました。



正しいタイミングで正しい融資を迅速に行うことが重要


藤吉 次のテーマにいきましょう。「地域経済活性化を成功させた取り組みの実例」です。京都銀行さんもこゆ財団さんも、それぞれの立場で地域経済の発展に寄与されてきましたが、阿南さんから取り組みについてお聞かせください。

阿南 当行では21年前の00年に「京都ベンチャー育成ファンド1号」を設立以来、ベンチャー支援業務を本格化させました。これまで387の企業に投資をさせていただき、そのうち30社ほどは上場しています。現在は産官学金の連携も図っていまして、45の大学や支援機関の参画を頂戴しています。

藤吉 実はForbes JAPANでは組織は小さいけれども価値は大きい企業を顕彰する「スモール・ジャイアンツ」プロジェクト(https://forbesjapan.com/small_giants/)を実施していまして、その第1回グランプリが京都のミツフジという会社でした。グランプリを受賞されたあと、テレビ東京「ガイアの夜明け」で紹介されたり、米IBMのグローバルパートナーになったりと急成長を遂げているわけですが、最初に投資をされていたのが京都銀行さんなのですよね。非常に素晴らしい成功例だと思っていました。

齋藤 手前味噌ですが、こゆ財団のようなITをフル活用している地域商社を地方創生の文脈の中に入れることができたのは、大きな事例だと思っています。この1年くらい、同じような団体が増えてきていますが、自治体主導でDXを推進してお金を稼ぐということをやっていますが、われわれがモデルケースとして機能したのではないかと自負しています。先ほど、野村さんがおっしゃいましたが、正しいタイミングで正しい融資をスピーディに行うことが、地域経済を活性化させるうえでいちばんのポイントです。例えばこゆ財団は、先ほども申し上げたように1粒1,000円のライチを販売していますが、ライチの収穫期は5月から7月の3か月しかないので、17年4月に僕が代表に就任してすぐ取り組んだんです。それから4年が経ちましたが、売り上げのほとんどがオンライン通販で、都心部の方々が買ってくださる。つまり、外貨を稼ぐことができているんです。

藤吉 齋藤さんの地域商社は、外からお金を稼いできて人材育成に回しつつ、地域の核になっていくのが非常にユニークだと思います。エリアの接点として、スピード感をもって立体的かつ有機的につなげていくのは非常によいことだと思いました。では3つ目のテーマ「地域経済をさらに飛躍させるために必要なDXとは何か」についてお話を聞いていきたいと思います。阿南さん、齋藤さん、いかがでしょうか。

阿南 非常に大きなテーマですが、ひとつ興味深い事例がありましたので、ご紹介をさせてください。当行は京都府の公民連携プラットフォームを設立し、維持するために相当のコストがかかっている遊休公共施設の活用に取り組んでいます。京都府福知山市と公民連携促進協定を締結し、廃校マッチングバスツアーを共催したのですが、当初は申込みが非常に少なかったのです。当行の営業店を通じた募集もしたのですが、芳しくありませんでした。

そこで、当行が導入している名刺管理システムに搭載されているメール一括配信機能を使って募集の配信をしたところ、その日のうちに定員を上回り、最終的には4倍以上の申し込みとなったんです。名刺交換ですから、決して取引先ばかりではなく、日頃接点が取れない会社さんから申し込みをいただいたり、新たな取り組みを模索している会社さんもあったりで、そういう情報自体に価値を感じていただいたようなのです。情報伝達の大事さと、今回は名刺情報でしたが、さまざまなデジタル活用法があると痛感したところです。

齋藤 DXはさまざまな捉え方があると思いますが、地域において重要なのは「勘と経験」からの脱却です。特に第一次産業はそうで、DXを進めることで事業の透明性、効率性、収益性が確実に上がります。こゆ財団もDX推進に力を入れていまして、人口1万7,000人の新富町で働いているメンバー全員がSlackを使い、情報はGoogle Driveで共有しています。すべてオンラインなので、新入社員も入る前にどんな雰囲気なのか勉強できるという利点があります。また、デジタル技術をフル活用してコミュニケーションを円滑化しているので、ANAやユニリーバ、ENEOSといった東京の複数の大企業とも連携できています。そういったひとつひとつの積み重ねが大きな変化になってきたわけですが、「新しい事業、産業を生み出したい」というイメージをしっかりもってやってきたことも、大きなポイントだったんじゃないかと思っています。



藤吉 移住を推進している地方自治体はたくさんありますが、こゆ財団のウェブサイトを見たとき、初めて「移住したい」という気持ちが湧いてきました。それは、あくまでツールであるDXがもたらす「便利さ」の先にあるコミュニケーションの楽しさや、本当の幸せがにじみ出ているからだと思うのです。非常にうまくいっている成功事例だと感じました。

最後に野村さん、DXのプラットフォームを提供する立場から感想をお聞かせください。

野村 阿南さんのお話は、デジタルの力を使って営業力を強化していくことの重要性を教えてくれました。齋藤さんのスピードが重要というお話からは、クラウドを金融機関に使っていただく時代を一刻も早く到来させる必要性を改めて感じました。今後のチャレンジとしては、融資業務をいかにクラウドへのせるかですが、その先に実現する地域経済の活性化という未来を見据えると、改めて大きなやりがいを感じました。

藤吉 ありがとうございます。京都と宮崎をリモートでつないで、最先端の取り組みをご紹介する有意義な時間を過ごせました。みなさん、ありがとうございました。



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Promoted by nCino / 文=高橋秀和 / 編集=高城昭夫

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