2004年に創業した「ヴァージン・ギャラクティック」では、宇宙旅行事業に乗り出すなど、常に挑戦し続けている彼の言葉から、冒険心に富む行動の源泉を探る。
ヴァージン・グループ創業者リチャード・ブランソン
ブランソンは1950年、弁護士とキャビン・アテンダントの両親の下にロンドン郊外で生まれた。17歳の時にパブリックスクールを中退し、18歳で学生の意見を取り上げる雑誌「スチューデント」を創刊した。
そこで培ったミュージシャンたちとの人脈を活かして、次にレコードの通信販売を手掛けた。そして72年、自身のレーベルである「ヴァージン・レコード」を立ち上げた。
84年に航空会社「ヴァージン・アトランティック」、2004年に宇宙旅行ビジネスの「ヴァージン・ギャラクティック」を立ち上げるなど、事業を拡大させていった。ヴァージン・グループは関連会社が40社以上、従業員7万人以上と巨大なコングロマリットに成長している。
会長を務めるブランソンは現在、1978年に18万ドルで購入したカリブ海ヴァージン諸島・ネッカーアイランドに住んでおり、総資産は41億ドルにのぼる。
1. 大事なのは、人をどう扱うか
周囲の人を大切にする姿勢を貫くブランソンは、幼い頃からディスレクシア（失読症）だったことを明かしている。
「ディスレクシアのおかげで、私は人に仕事をふるのが非常に得意になった。素晴らしい人材を見つけては、雑誌の編集や取材、数字の計算を手伝ってもらった」と語っている。
2. 失敗しない者は、何も成しえない
ブランソンは数々の挑戦をしているが、過去には多くの失敗もしている。85年にはボートでの大西洋最速横断の世界記録に挑戦したが失敗。途中で救助されている。
熱気球での地球一周にも3回チャレンジしたが、いずれも失敗に終わっている。ビジネスにおいても、ヴァージン・コーラを発売したもののアメリカからは撤退を余儀なくされている。しかし、ブランソンは「人生は究極の冒険なんだ。これからもまだまだ限界に挑戦し続けるつもりだ」と語り、失敗を肯定的に捉えている。
3. ビジネスは、楽しむものだ
レコードの通販会社から始まったヴァージン・グループは、航空会社や鉄道、宇宙旅行など多岐にわたる事業を抱える巨大なコングロマリットへと成長した。
ヴァージン・グループの成功の秘密を「楽しむこと」だとブランソンは言っている。
「ビジネスは楽しむものだという考えが、ビジネスの慣習に逆らっていることは知っている。多くのビジネススクールでは、DCF法や割引現在価値などについて教えられ、ビジネスでは勤勉さが強調されている。でも、ビジネスには“楽しさ”が必要だ。突き抜けた挑戦を成功させるのは“楽しさ”なのだ。楽しければ強い情熱に繋がり、楽しさへのこだわりが顧客に恩恵をもたらすから」
4. 良いアイデアのほとんどは端的に表現できる
ブランソンは2017年、自伝「ファインディング・マイ・ヴァージニティー」の出版にあたり行われたインタビューの中で「良いアイデアのほとんどは端的に表現できる」と語っている。
事実、「ヴァージン・オーストラリア航空」は、航空会社「ヴァージン・エクスプレス」CFOのブルッド・ゴッドフリーが同社を辞めようとしていた時に、アイデアを書き留めたビールのコースターをブランソンに見せたことから始まっている。
ブランソンは「あなたの提案がビールのコースターや、ナプキン、封筒の裏に書き込めないほど長いなら、私はそこに収まる長さの別の提案を聞きたい」と語っている。
5. 好奇心を維持するのは冒険心だ。大きな機会のために、常に心を開いておくこと。
ブランソンは、65歳の誕生日を迎えた2015年、10歳の自分に向けて手紙を書いた。そこでは、「夢を見ること、創造することをやめてはいけない」「夢を追いかけることを、誰にも邪魔させてはいけない」と冒険心と夢を見ることの重要性を10歳の自分に語りかけている。
20年7月に70歳となるブランソン。宇宙旅行事業など挑戦的な試みを続ける彼の冒険心が消えることはまだまだなさそうだ。
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