ちなみに、英国にとってアフリカで南アフリカに次いで大きな市場は、西アフリカのナイジェリアである。アフリカ最大の経済規模を持つナイジェリアと英国の貿易額は、離脱交渉に入る前の15年時点で79億ドル(約8700億円)で、20年までに266億ドル(約2兆9200億円)に達すると予想されていた。だが、ナイジェリアは最大の収入源である原油の価格下落に見舞われており、英国との貿易額でも原油関連が25%弱を占めている。
アフリカにとって最大の貿易相手国は中国で、現在の年間貿易額は3000億ドル(約33兆円)を超える。アフリカ諸国が英国と有利な協定を締結できても、それによる利益のかなりの割合が中国への債務返済によって相殺される形になるかもしれない点は、押さえておくべきだろう。
もちろん、対中債務があるからといってアフリカ諸国による英国との新たな協定の締結が妨げられるわけではないが、それによって将来の協定による利益の一部は吸い取られる可能性があるということだ。
英国のEU離脱がアフリカ諸国にどんな影響を与えるか、その全貌はまだ見えない。アフリカは世界で2番目に速い経済成長を遂げている地域だが、極度の貧困下で暮らす人が1990年代よりも1億人余り増えている。アフリカでは巨額の投資が行われてきたにもかかわらず、全体として見れば貧困は一段と悪化したということだ。