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2019.05.21 11:45

医薬品やテクノロジー製品だけではない。350年以上続くメルクが社会に提供する価値とは

メルクバイオファーマ株式会社代表取締役社長のアレキサンダー・デ・モラルト(写真=福岡諒嗣/Gekko)

メルクバイオファーマ株式会社代表取締役社長のアレキサンダー・デ・モラルト(写真=福岡諒嗣/Gekko)

350年以上にわたってヘルスケアのテクノロジーを進化させてきた企業がある。

ドイツ・ダルムシュタットに本社があるメルクは、医薬品、化学品の研究開発分野において世界で最も長い歴史を持つ企業だ。

そんな歴史的背景をもつメルクの日本法人メルクバイオファーマ株式会社は、バイオ医薬品を用いた、がん、腫瘍免疫および不妊治療の領域で革新的な治療法を提供している製薬会社だ。

医薬品分野の革新へ飽くなき挑戦を続けるメルクバイオファーマ株式会社の根源的精神は何に由来するのか。同社が持つ「イノベーションのルーツ」は何なのか。メルクの歴史を紐解きながらその実像に迫る。

メルク350年の歴史に根付く「イノベーションの種」

メルクのルーツは、創業者フリードリヒ・ヤコブ・メルクが1668年にダルムシュタットで開業した「天使薬局」にある。


天使薬局

この頃はニュートンが万有引力の法則を発見するなど科学革命が進展した一方で、錬金術が研究されるなど、科学的に混沌とした時代でもあった。医学の分野でも未解明の分野が多い中、天使薬局では、動植物や鉱物を調合した医薬品の販売を行っていた。
18世紀には文豪ゲーテの友人でもあったヨハン・ハインリッヒ・メルクが、自然科学者として化学、鉱物学、古生物学、比較解剖学といった学問分野の普及に大きな貢献を果たした。

19世紀に入ると、ハインリッヒ・エマニュエル・メルクが鎮痛剤などの成分となる活性物質アルカロイドの抽出に成功。1827年、「薬学・科学の新見本集」を発行し、医学界に大きなイノベーションをもたらした。メルクは調剤薬局から研究型の製薬企業へと発展することになる。

1890年代には、いち早くバイオテクノロジーの研究にとりかかり、乳清から乳酸を製造する事業を展開したほか、細菌学の研究部門を設置し、ジフテリア血清や天然痘ワクチン、結核やチフスの治療薬の製造を開始している。

1927年にはバイエル社と共同でビタミンD製剤を発売。ビタミン欠乏症「くる病」の治療に用いられ、多くの子どもの命を救った。

第二次世界大戦で工場が接収され、空襲により大きな打撃を受けたものの、戦後もメルクは革新的なバイオテクノロジー研究を推し進め、1950年代には発酵技術を基にしたステロイドの製造に成功、その後も2型糖尿病の治療薬やがん治療薬の開発研究で世界をリードしている。

メルク社を350年間支えてきた「好奇心、多様性、企業家精神」

メルクは大胆な技術革新を繰り返すことによって350年の歴史を紡いできた。なぜ、これほどの長い期間、変革の歩みを止めずに発展させ続けることができたのか。日本法人メルクバイオファーマ株式会社代表取締役社長のアレキサンダー・デ・モラルトによると、350年にわたって、「メルクを継続させ、企業価値を高める」ために、たゆまぬ企業努力を重ねてきたことがその根幹にあるという。

「私たちは長い歴史の中でCuriosity(好奇心)、Diversity(多様性)、Entrepreneurship(企業家精神)に基づく企業組織文化を育みながら未来を形づくってきました。常に『自己変革」を考えながら、人類の進歩に向けて革新を重ねてきたことで、メルクはこれまで350年間存続できて、さらに未来を見ようとしています。

絶えずリスクとビジネスチャンスのバランスをとりながら多様化に努め、サイエンス、テクノロジー、イノベーションという共通項を持つ3つのビジネス、すなわちパフォーマンス・マテリアルズ、ライフサイエンス、ヘルスケアの各ビジネスに対するてこ入れ(振り返り、向上改善)と事業の拡大を図っています」

ヘルスケア・ビジネスの日本法人であるメルクバイオファーマのミッションは、患者さんと医療関係者への貢献を果たすこと。そのため、メルクが長い歴史の中で大切にしてきた考え方である「好奇心、多様性、企業家精神」を社員一人ひとりが持てるように心がけているという。

「メルクのグローバル企業価値およびさまざまな能力に加えて、望ましい企業文化と労働環境を形成する重要な要素は、このCuriosity、Diversity、Entrepreneurshipという3つの考え方に基づきます。

好奇心は、私たちが常に現状に挑戦し、革新的なアイデアを探索するよう促してくれます。多様性も、この好奇心に関する概念を後押ししてくれます。異なる年齢、性、さまざまな信条、背景、専門知識を持つ人々によってチームが構成されるよう配慮することにより、個性的なものの見方やアイデアを生み出しやすい環境が自ずと形成され、それらを共有することで独自性に富んだよりよい考え方が生み出されます。このような環境があってこそ、私たちは革新的な会社として成長できるのです」

老舗企業の社員に企業家精神を植え付けるのはたやすいことではない。しかし、メルク社350年の歴史がすなわちイノベーションの歴史であることを考えると、チャレンジ精神を是とする社風が醸成されていることも頷ける話だ。

「当社が競合するメガファーマとは異なる規模であることは、スピードと柔軟性という競争力の面で有利に働きます。それでも、競争に勝ち抜くには社員同志が共働しあうことが基本となります。各自の担当や役職にかかわらず、誰もが自ら進んで『腕まくり』をしなければなりません。誰もが部署の垣根を超えて、日々の業務で遭遇する課題の解決やビジネスチャンスの活用に貢献しなければなりません。だから、私たち一人ひとりが企業家精神を持つことが、成功の鍵になるのです」



がん治療、不妊治療に特化する理由

2007年に発足した日本法人メルクセローノ株式会社は、2019年4月にメルクバイオファーマ株式会社へと社名変更し、「がん」「腫瘍免疫」「不妊治療」を重点領域としている。

デ・モラルト社長は、メルクバイオファーマ株式会社が、がん・腫瘍免疫および不妊治療領域に特化する理由をこう語る。

「世界のなかでも、日本は高齢化社会が著しく進行しています。日本、アジア、世界では、今だ、難治性がんに苦しむ患者さんが多い。こうした課題解決の一助となるべく、当社では東京に北東アジアの研究開発拠点を置き、アジアによるアジアのための医薬品開発を推進する数少ない製薬会社です。この強みを活かし、がんと腫瘍免疫にフォーカスすることで、日本の患者さんと医療の発展に貢献していきたいと思います。

また、同時に少子化が進む日本で、不妊治療の研究開発を進める意義も見出しています。不妊治療の医薬品を提供するだけでなく、妊娠に関する正しい知識を持ってもらえるよう啓発を行うことも私たちの重要なミッションと考えています」

がん治療、そして不妊治療。メルクバイオファーマ株式会社がこの領域へのイノベーションに特化する理由は、単に製薬会社として治療薬のニーズに応えているだけではない。がん患者さん、不妊治療患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上を見据えているからだ。

「当社の揺るぎない目標は、アンメット・メディカル・ニーズの高い特定の専門領域における患者さんに革新的なソリューションをお届けすることです。

例えば、治療困難ながん患者さんに何らかの変化をもたらしたり、新しい家族をつくりたいのに赤ちゃんができないご夫婦に対するサポートに取り組むなどしています。」

患者さんへの負担を減らし治療に取り組むなかで、患者さん自身のかけがえのない時間を創出させようと追求する同社の姿勢とメッセージは、メルクバイオファーマ株式会社へと社名を変更したことに合わせて公開された動画に込められている。


新社名に込められた「想い」

メルク350年の歴史に安住せず、これからも、サイエンスとテクノロジーのグローバルリーディングカンパニーであろうとするメルクバイオファーマ株式会社。新会社名で「バイオファーマ」を強調しているのには、ある深い理由があるという。

「私たちはメルク、ドイツ・ダルムシュタットに本拠を置くメルクであり、オリジナルなメルクです。メルクバイオファーマは、日本におけるメルクのヘルスケア部門を代表しており、メルク・グローバルのコーポレート・ブランド戦略に沿ってブランド展開をしています。つまり、全世界でひとつのメルク・ブランド(One Merck)を追求していることの一環です。北米(米国とカナダ)を除く、世界各国でメルクのブランドを標榜し、ブランド力向上を追求しています。

新社名は、改めて日本の患者さんに対する当社のコミットメントを表しています。フォーカスしている領域としては、がん、腫瘍免疫、不妊治療です。メルクバイオファーマは、命を生み出し、患者さんの生活を向上させ、健康でより長く生きていただくためのサポートに尽力しています。研究開発する領域を絞り込み、深く追求し、グローバル・スペシャリティ・ファーマを目指すというのがグローバル全体の目標です。日本においても、特定の領域にフォーカスし、スペシャリティファーマのリーダーシップ・ポジションを獲得している当社だからできることを推進し、ポジショニングを強固なものにしていきたいと考えています。」

医療の歴史に画期的なイノベーションを生み出してきたメルク。その精神を新社名に刻み込んだメルクバイオファーマ株式会社のさらなる技術革新に、多くのがん患者さん、不妊治療患者さんの願いと期待が寄せられる。

Promoted by メルクバイオファーマ株式会社 文=久世和彦 写真=福岡諒嗣/Gekko