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共創する組織のつくり方|#3 ドミニク・チェン
さまざまな学問領域をまたぐ豊富な知見と人脈、鋭い考察で時代を俯瞰する情報学研究者のドミニク・チェン。起業家としての顔も持つ彼に、名刺が持つ可能性と組織にシナジーを起こす情報の共有化と効率化について語ってもらった。


「この白い箱を持ってみてください」早稲田大学の研究室で、ドミニク・チェン准教授(以下、ドミニク)は5センチ四方の箱を指差して言った。気鋭の研究者が洋服の上から自分の心臓に聴診器を当てたとたん、白い箱がブルル、ブルル、と力強く震える。こちらが驚いていると、ドミニクは教えてくれた。

「今、感じてもらった振動は、僕の心臓の鼓動を表しているのです。まるで、心臓を握っているような感じがしませんか?」

大阪大学とNTTが開発し、ドミニクも現在その研究に携わる〈心臓ピクニック〉という名のこの機械は、その独特の“感触”から、例えば初対面の人との会話などに取り入れたとすれば、良いアイスブレイクになるそうだ。


心臓ピクニックは、単なる鼓動ではない細かな振動まで表現していた

「ワークショップなどでも盛り上がります。実は今、これを基にして、ヨーロッパの素粒子物理学者の方と『心臓の鼓動が内蔵された名刺ができないか』という話も出ていたりします。この心臓ピクニックは心音を録音できるので、たとえば名刺にQRコードを印刷して読み取ってもらうとか、薄いスピーカーを内蔵するとか、いろいろな可能性が広がります」

既存のフォーマットに、新しいメディアを掛け合わせることでどう進化するか。まさにこの手の話は彼のフィールドだ。

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「名刺には、それが活きるプロセスというものがあると思います。その名刺が、送られてきた資料にクリップで留められていたものなのか、バーで偶然出会って話が盛り上がって交換した名刺なのか。出会いの形によって、名刺の持つ意味は変わってきますよね。また、そこに書かれているのは客観的な情報ばかりだからこそ、身体情報など主観的な情報が入れ込めたら面白い。“心音”って『小柄な人だけど鼓動は力強い』とか、外からは見えないパーソナルな部分が感じられるのです」

ドミニクは、個の価値と役割の進化を指摘する

名刺を交換する時は、互いの体が物理的に近づき、儀礼的なアクションを起こす。そうした儀礼的なコミュニケーションにおいて、デリケートな部分を晒(さら)すことが会話の糸口を開くことにもなる。すると、そこで交わされた一枚の名刺の意味はより深くなるだろう。

「情報技術の世界では『いかに個々の人間が自己完結してどう良くなるか』ということが追求されてきました。これは非常に近代西洋的な考え方ですが、欧米では最近、関係性の前提で〈個〉がどう生きるか、というむしろ東洋的なあり方が議論されています。SNSにしても公共施設のあり方にしても、個だけで閉じるのではなく、初対面の相手とどんな出会いをし、どんな会話が生まれたか。それによって相手との関係性が規定される。そんなお互いのインタラクションが作り出す世界が生み出されたら面白いですよね」


ドミニク・チェン|私は計算して人と付き合わない」というドミニク。尊敬している人に認知してもらうには、「いい仕事をすること」、その結果としてつながることができた関係に幸福を感じるという。早稲田大学文学学術院表象メディア論系准教授。NPOコモンスフィア理事。ディヴィデュアル共同創業者。著書に『電脳のレリギオ』(NTT出版)『謎床: 思考が発酵する編集術』(晶文社、共著)など。

出会った人と言葉を交わし、名刺を交わす。そうした人と人の出会いとつながりを可視化することができるのが、Sansanの名刺管理サービスだ。一昔前まで、営業マンにとって名刺は、自分の仕事の成果を図るものさしであり、ビジネスにおける「武器」だった。しかし今、名刺の捉え方は、「個人の所有物」から「組織でシェアするもの」へと変わってきている。名刺をIT化し組織全体で共有することで、組織の資産となるからだ。

「小規模な会社のメンバー間であれば『あの部署の誰が、あの会社の人と名刺交換をしたらしい』という情報や、『この前、名刺交換をしたあの人はすごい!』といった“熱量”がアナログな形で伝わりますが、大企業ではなかなか難しいですよね。だからこそ、共有できるサービスというのは、5,000人とか1万人規模の大企業で、より有意義に利用されるのではないでしょうか」

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Sansanでは日経で掲載された人事情報がアップデートされるようになっている。自他の情報がオンライン上でアップデートされ、いろいろな人にアクセスしてもらうと平らなネットワークが高次元に重なり合う。

「ある種、気づかれずに見過ごされてきたものにデータを紐づけることで、新たな価値に気づくことができます。そうして物理的なアイデンティティとオンライン上のアイデンティティが連動していくような、そんな期待感が生まれますね。応用を広げると、将来的にはSNS上に自分の活動ログがあって、そこへのアクセスキーとして名刺交換するといったことなど、いろんな想像力が働きます。名刺を共有し、情報を効率化することで、『あの人が昇格したからお花を贈ろう』といった生身の人間同士のコミュニケーションが生まれることは非常にいい社会像につながるのではないでしょうか。」

組織は人。その広がり方が重要になる

また、可能性という点では、個人の潜在能力を伸ばすことにもつながる期待もある。

「企業のトップは、どうしても目立った活動をしている人に注目しがち。しかし、テクノロジーによって人と人のつながりが見えるようになれば、『誰がゴールを決めたか』だけでなく、『誰がアシストしたか』までわかります。すると、個々の潜在能力が生かされるようになるはずです。



たとえば、ビジネスで、ある社員のアシストによって成功した方の場合、その社員のアシスト内容もきちんと記録され、且つ報酬も入るような仕組みです。このような技術的には既に実装可能なレベルですが、あとは、それをビジネス習慣や企業文化にどう落とし込んでいけるか。それができれば、人と人の関係はよりフェアになっていくはず。現場では感謝が生まれ、協力的にもなる。個々が持つ能力が最大限に活かされるようになるべきですね」

効率化一周後の心得と物質的な愛着心

あらゆる分野において、今後ますます情報の効率化は進む。だからこそ、欠かせないのが、意識的に多様性を保つことだとドミニクはいう。

「便利さや速さだけを求めて行くと、人間の心は荒廃してしまうもの。効率化しすぎると、組織は同じ「指向性」の人で固まってしまって異質なものが見えなくなり、行き詰まってしまうということが分かってきています。今、世界は効率化を極めていくフェーズが一周して、次のフェーズに移りつつあると思います。よく、『どうしたらイノベーションを起こせますか?』と質問されるのですが、あるコミュニティだけに属していると一定のトレンドしか見えなくなりがち。だからこそ、個人も組織も、常に自分とは異質なものに関心を向けられるよう、多様性を招き入れるためのの情報環境を整えることが大切だと言いたいですね」

情報を効率化する一方で、多様性のある環境を育てていくこと。同時に、ある視点を取り入れることが、組織やビジネスにシナジーをもたらす。

「現在、ウェルビーイングという概念が注目されています。これは、心の『良好な状態』を意味する心理学の概念で、精神的に充実した状態を示すもの。今後は、この観点からも、人間の無意識や感情をプロダクトにどう取り込むかがポイントになっていくように思います。さまざまなコトがデジタル化されても、物質的なモノに対する人間の愛着心はなくならないでしょう。実際、これだけデジタル化が進んでも、紙の本はなくなっていませんし、紙の本がすべてなくなるという未来はイメージしにくいですよね。ウェルビーイングを高めるという視点を持ってサービスを突き詰めていけば、10年後には想像もつかないよう、新たな人同士の関係性が生まれるはずです」

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連載「Sansan prsents "SHARE & CONNECT" ─共創する組織のつくり方─」
#1:公開中|ピョートル・フェリクス・グジバチ
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#2:公開中|立花陽三
〜愛され球団「楽天ゴールデンイーグルス」の胸熱シナジー〜
#3:本記事|ドミニク・チェン
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Promoted by Sansan text by Kei Yoshida photograph by Setsuko Nishikawa

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