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2018.08.22 15:00

「リスクを取らない選択は誰でも思いつく」 バルクオム代表野口卓也はどう失敗と向き合ってきたか

次世代を担う「30歳未満の30人」を選出したForbes JAPANの「30 UNDER 30」。Forbes JAPANと、若手ビジネスパーソン向けウェブマガジン「EL BORDE」による特別賞「EL BORDE特別賞」が、これからのビジネスシーンを牽引する3人に贈られた。

受賞者のひとりである野口は、メンズスキンケアブランドを展開する「バルクオム」の代表取締役CEOを務める。2013年のブランドローンチから販売の場を徐々に拡大させ、2017年には台湾を手始めにアジア進出を果たした。

大学在学中から「起業」にこだわった。「バルクオム」以前にも数々の事業を立ち上げたが、会社として拡大していくことはなかった。しかし、それをただの失敗を終わらせない粘り強さが彼にはあった。

「メンズスキンケア世界シェアナンバーワン」という今後の目標に、今どう向き合っているのか。なぜ、事業が軌道に乗り始めた今も「失敗を恐れずにリスクを取る」姿勢を変えないのか。

今回の受賞を機に、過去の失敗を糧に変えるその強さはどこにあるのかを振り返ってもらった。以下に一問一答を紹介したい。


ブレイクスルーした実感は未だにない

─30 UNDER 30 JAPANの「EL BORDE特別賞」を受賞したお気持ちをお聞かせください。

実は、高校生の頃に小説を書いて新人賞を獲ったことはあるのですが、経営者として賞をいただくのは初めてです。大学を中退して19歳の時に起業して、それからちょうど10年。うれしいですね。ありがとうございます。

─2013年にBULK HOMMEを創業される前、数社の起業をご経験されたそうですね。

それまで本当に、めちゃくちゃに失敗してきました。だから「次はもうちょっと慎重になろう」と、あらゆるビジネスプランを考えました。さまざまな業種業態を比較検討してみると、男性化粧品にはマインドシェアを持つブランドがほとんどない状態だった。周りの人に聞いてみても、「メンズコスメの圧倒的ナンバーワンブランド」がまったく出てこなかったんです。けれども市場としては毎年少しずつ伸長している。ここなら可能性があるのでは、と考えました。

─確かにここ数年、ジェンダーレスなモデルやタレントが人気を集め、男性の美意識も高まっているように感じます。事業にとっては追い風なのではないでしょうか。

創業後2年くらいは厳しい状況でした。しかしこの約3年でスキンケアに関心のある学生たちが社会人になり、可処分所得が増えた分、より良いものを選べるようになってきたという感覚はあります。

ただ正直なところ、何か大きなブレイクスルーを果たした、という実感はないんです。市場の成長性があるとは言え、一歩一歩実直に、ユーザーと向き合いながら、少しずつリピーターを増やしてきたことに尽きます。僕自身、SNSは大事なプラットフォームだと思っていて、SNSを通じたユーザーとの対話も大切にしています。

─男性のユーザーは一度気に入ったブランドがあると、ずっと変えずに使い続ける方が多いですよね。

自分の消費行動を振り返っても、思い当たる節はありますからね。女性のように、常にSNSや雑誌をチェックして、新しいコスメやスキンケアを血眼になって探すようなことはあまりない。当社の事業モデルとして、サブスクリプション(定期購入)型のEコマースが中心となっていることも大きいでしょう。

実際に利用していただいた方がリピーターとなって、Amazonスキンケアトライアルセットの売れ筋ランキングにも入って、実店舗から「うちで取り扱いたい」と問い合わせをいただいたところにセールスをかけてきた。そうやって好循環が生まれ、少しずつではありますが、認知度が高まってきました。

目指すは「メンズスキンケア世界シェアナンバーワン」

─会社を経営していくうえで、どのようなマネジメントを心がけていますか。

僕よりも上の世代の経営者には、精神論を通す人も多いと思いますが、僕は苦手です。あまり飲み会も開かないし、いい意味でドライ。ITベンチャーでよくある「社長以下、みんな20代」みたいな組織もあるけど、当社の社員は19歳から43歳くらいまで、年齢も比較的幅広くて、バックボーンもバラバラなんです。

僕が世代的にちょうど真ん中なので、うまくバランスを取ろうとしているところはあるかもしれません。一人ひとりの個性を尊重して、あまり「会社の色に染める」ようなことはしたくない。組織として大きくしていこうとするより、少数精鋭でうまく自律的な体制を作れたらいいなと考えています。

ただ、ひとつ共有しているビジョンがあります。それは「世界一のブランドを作る」ということ。他社のビジョンはもっと社会的な意義を持たせますが、僕らが目指すのは「多種多様なメンバーでも共有できる定量的な価値観」です。「世界シェアナンバーワン」ならはっきりとした数値で示せるし、様々な個性を持った人がいるからこそバランスを保ちながら目標を目指せるようになる。今の勝ちパターンが通用しなくなったら他の方法で試してみようというスイッチングもうまくいく気がするんです。

─昨年11月には3億円の資金調達を発表されました。大きなチャレンジとなると思うのですが、どのような戦略を考えているのでしょうか。

世界シェアナンバーワンを目指すべく、その大半を海外展開に投じており、昨年の台湾を手始めに中国、韓国、香港に進出しました。日本でも当初は苦戦したように、市場を確立するにもブランドの認知を高めるのも相当時間がかかりますから、可能な限り海外数カ国を同時に走らせて展開していきたい。とはいえ、我々は人一倍努力しなくてはならないベンチャー企業ですから、大きなリスクテイクでもあります。ですから、各国にローカライズするというよりは、国籍や文化背景問わず、全世界の男性に共通する美意識や価値観を探り、共通言語としてあらゆる人に伝わるクリエイティブを心がけています。

─海外との交渉を進めていくうえで、日本ブランドはプラスに働いていますか。

いくら僕らが日本から来ているとはいえ、無名であることは認めざるを得ません。これまでソニーなど世界に名だたるブランドがMADE IN JAPANのイメージを高めてきましたが、それにこだわるよりはむしろ無国籍というか、バルミューダのように誰もが良いと思える価値を提供していきたい。徹底的に論理的に考えて、国が違えど再現性のある方法で実行していくことを基本に考えています。

少しずつ階段を上って行くプロセスこそ楽しい

─BULK HOMME以前、そして創業当初の2年ほどと、なかなか成果が出ず苦しい場面もあったかと思います。そんな苦難を乗り切るモチベーションはどういったところにあったのでしょうか。

「経営しているのが楽しいから」と言う方もいますが、僕が自負しているのは、「覚悟の量」が違うということ。僕は結構失敗する方です。大小はありますが、毎日のように失敗しては反省している。でもそうやって、一つ一つのアクションで学習して、成功したときに次のステージにいく。少しずつ階段を上っていけるのが楽しいんです。

創業当初に「ネット広告に1万円つっこんだのに、コンバージョン0」で青くなっていたのが、今は1000万円使ってもしっかり会社として成果を出せる。とはいえ、胃がキリキリすることの連続ですけどね。

─「失敗は成功の母」と言いますが、失敗するにも何か「受け身の取り方」があると思います。野口さんの場合、失敗のときにどのようなことを意識されていますか。

まずは「失敗を認める」ことが早いと思っています。朝礼で社員に向けて「これをやろう」と言ったのに、その日のうちに「ごめん、僕が間違っていた」と謝ることはザラにある。

僕は自分の弱みを仲間にさらけ出すタイプです。それが信頼関係を築く上でもいい方向に働くこともある。「ダメダメ」とは思われていませんが、「ダメな部分がある人」とは思われていると思う。社員のみんなにも、自分の弱いところや、仕事で失敗したことも隠さないで教えてほしいんです。

社員をとても頼りにしているから、ある程度予算を渡して任せています。失敗は咎めません。何もしなかったら怒りますが、施策を打ったり、仮説を回すことはどんどんやってほしい。失敗を繰り返しても、しっかり検証して次はうまくいくように、あるいは小規模の失敗で収まるようにしていけばいいんです。

─「失敗してもいい」と伝えても、やはり多くの人は失敗してもいいとはなかなか思えないのではないでしょうか?

最初から何も失敗しないでアタリばかり引ける人なんていない。だったら、そのサイクルを速くしてアタリを見つけた方がよいと思います。「リスクを取らない選択」というのはつまり、誰でも思いつくようなアイデアだということ。どんなに苦しくてもリスクを取りつづけていくと、全体として常に妙手を打てるようになれる。ましてや、歳を重ねるとますますリスクを取りにくくなっていきます。今取れるリスクから取っていかなくてはならないんです。自分が参加しているプロジェクトでもいいし、どんな身近なことでもいい。大きな予算を任されて、全部突っ込んでコケたって、せいぜいクビになるくらいじゃないですか。

─そう思えるところに、野口さんの強さがあるのかもしれませんね。

結局、筋トレみたいなものだと思うんです。3キロのダンベルから始めて少しずつ負荷をかけていけばいつか100キロのベンチプレスを持ち上げられるようになるかもしれない。そうやって、自分の取れるリスクの許容範囲を広げながら実行していけば、いつの間にか大きく成長しているはず。そう考えると楽しいじゃないですか。

─野口さんのこれからのビジョンを教えてください。

繰り返すようですが、「メンズスキンケアブランド世界シェアナンバーワン」。これは「掛け値なしに誰が見てもそうだ」という状況まで行きたいんです。我々の試算としては、約500億円の売上をあげればメンズスキンケア市場を取れます。しかし、そのうち日本国内の売上が大半を占めているようでは、世界シェアナンバーワンとは言いきれない。レッドブルがエナジードリンクの代名詞になっているように、世界のどこに行っても「メンズスキンケアブランドならBULK HOMME」と言われるまでになりたいです。

そこまで到達できたら「産業を作る経営者」だと思うんです。産業・市場性ゼロから、プロダクトと戦略でこれからもグローバルで戦っていきたいです。

あと、個人的な夢としては、いつかホテルを作ってみたい。遠方出張も多いので、仕事やプライベートも含めてさまざまなホテルに泊まることが多いのですが、ファシリティやサービスはもちろんのこと、お客様一人ひとりの1日24時間を丸ごとプロデュースするって、センスが問われるし難易度も高い。だからこそいつか、という思いはありますね。


野口 卓也

1989年、東京都出身。慶應義塾大学環境情報学部中退。ITベンチャー等複数の企業を立ち上げ、2013年TSUMO・JP株式会社BULK HOMME事業部を発足。2017年、組織再編を経て株式会社バルクオムを設立、代表取締役CEOに就任。


【共通質問】

・座右の銘は?

「誰にも取れないリスクを取れ」。たとえ失敗したとしても、会社をクビになるくらいですよ(笑)。もちろん、むやみやたらにリスクを取っているわけではありません。考え抜いた結果に出てきた選択がリスクを伴うものなら、挑むべきものだと考えています。

・「#わたしのバイブル」として1冊挙げるなら?

孫正義さんの「志高く孫正義正伝」。起業家必読の一冊だと思います。漫画なら「サラリーマン金太郎」。漫画の主人公みたいに、型破りな経営者になりたいんです。

・休日の過ごし方は?

ホテルでゆっくり過ごすことも多いです。お気に入りは「コンラッド大阪」、「アンダーズ東京」。ゲストを24時間を支えるホスピタリティは本当に素晴らしいと思います。

・憧れの「Over 30」は?

前澤友作さん。ワンプロダクトで大きく成功されている点を特に尊敬しています。また、堂々とお金を使うスタイル、瞬発的な判断のセンスをお持ちであることにも憧れています。


EL BORDE」とは

日本のミライを創造する若きビジネスパーソンのために、 仕事やプライベートに役立つ知識や情報を発信する野村證券のオウンドメディアです。 野村證券は「EL BORDE」を通して、若者たちの「変革と挑戦」を応援していきます。

Promoted by EL BORDE 文=大矢幸世 写真=小田駿一

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