オフィス家具のオカムラとForbes JAPANが共同制作したビジネス誌『WORK MILL』。創刊2号の発刊を記念して都内で開かれたトークセッションでは、起業家や有識者によるさまざまな視点の“働き方改革”が示された。ここでは、マイクロソフトがビジネスの現場で上げた「成果」をもとに、新しいワークスタイルの本質を探る。
日本マイクロソフトのトークセッションでは、同社の輪島文シニアプロダクトマネージャーとWORK MILLの遅野井宏編集長が登壇し、「マイクロソフトが実践する働き方改革」をテーマに議論を重ねた。
輪島によると、同社は2011年、新しいワークスタイルを実践し、わずか5年で社員1人当たりの売上高が26%向上したという。働き方改革に多くの企業が取り組む現在、マイクロソフトはなぜ、大きな成果を出すことができたのか。社内の改革推進を担う彼女はこう言う。
「改革の目的は、残業や福利厚生の改善といった制度の再構築ではなく、あくまでも売上を高めることにある。社員一人ひとりがビジネスの現場でどう活躍できるのかを考え尽くした結果なのです」
政府が掲げる働き方改革のもと、単に労働時間を短くするというだけではビジネスの成長は難しい。成果を出し続けるためには、働き方を振り返り、無駄な時間を「見える化」して有効活用することがポイントとなる。
その「見える化」を可能にしたのはOffice 365が持つ膨大なワークスタイルビッグデータだ。いまや同社が提供するクラウドサービスOffice 365は主要企業の8割以上が利用。会議の数にすると1カ月に10億件以上、メールはこれまでに4兆件以上に上るという。このデータをもとに、Office 365に含まれるMyAnalyticsという分析ツールを使い、時間の使い方や、社員間のコラボレーションの状況を見える化しているのだ。
例えば輪島の実際にあったケースでは、1週間のうち、会議時間に22時間を費やしたが、目標は20時間だったので、少し多すぎたのではないか。一方で、メールの送受信に割いた時間は10時間で、目標の13時間以内に抑えることができた、といった分析結果を手元のPCで確認できる。
同社では、このMyAnalyticsを使った業務改善パイロットプロジェクトを営業など4部門で集中的に実施し、無駄な会議時間が5カ月で27%、3,579時間削減できたという。これは従業員2,000人相当に換算した場合、年7億円の経費削減に相当するという。これを「働き方を可視化することが、いかに大事かを如実に物語る事例」と遅野井は評価する。
日本マイクロソフトの取り組みは明確な数字として表れた。そして現在、同社の分析は次のステージに進んでいる。組織レベルの分析により、トップパフォーマーの理想的な行動パターンを形式化。それをベンチマークとし、全体の底上げから生産性を向上させる。テクノロジーによる「見える化」が、働き方改革の本質につながるのだ。