バノン氏は、米大統領選挙中の報道を問題視。トランプ氏に対する間違った報道が多かったとし、NHKを含む、ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、CNN、英BBCなど世界の大手報道機関を批判した。
バノン氏の指摘の“真偽”のほどはまだ確認されていないものの、ここ数年、フェイクニュースの深刻さが増し始めていることだけは間違いない。ここで実例を列挙することは割愛するが、例えば、日本においても、今年の「流行語大賞トップ10」にフェイクニュースという言葉がランクインした事実が、その影響力を象徴するものとなったのではないだろうか。
そもそもフェイクニュースとは何か。言葉そのままの意味は「嘘(=真実ではない)ニュース」となる。フェイクニュースを発信する側にはさまざまなメリットがある。広告収益など経済的な利益をもたらす場合もあれば、発信者の自己顕示欲を満たす場合もあるだろう。また時に、特定集団のプロバカンダだとして利用される場合もありうる。
とはいえ、真実ではない、また発信する側にメリットをもたらすニュース(情報)というのは、フェイクニュースという言葉が注目される以前から存在してきたと認識するのが正しいだろう。より本質的な問題は、IT技術の発展により、SNSやブログなど「情報を発信する手段」が増え、「情報が伝達される範囲」が拡張されたことで、社会に流通する情報量そのものが爆発的に増えたという点にあるのではないか。
つまり、「情報の民主化」の負の側面として、「吟味されない情報」が増えたことこそ、現代的な意味でのフェイクニュースが発生する原因のひとつだと考えられる。
そして、情報量の爆発的な増加は、メディア同士の競争をより激化させる傾向がある。他メディアや情報発信に優れた個人よりも早く、新しい情報を発信しようと躍起になるメディア内部では、「情報の吟味」がますますおろそかになっていく。結果、大手メディアでさえフェイクニュースを掴まされてしまうという「情報の悪循環」が起きてしまう。
なお、情報の吟味には「お金」と「人手」がかかる。しかしながら、現代社会において情報は“タダ”で消費できるという認識が一般的だ。その“経済性の捻じれ”も、フェイクニュースを生む温床になっていると言えるのではないだろうか。
現在、それら情報流通の新しい局面を、人工知能(AI)、もしくは「ロボット記者」の力で打破しようという動きが世界各地で本格化している。
韓国の名門校、KAISTとソウル大学は、2014年からフェイクニュースを判別するための共同研究をスタート。研究から約3年半にわたり、世界5000万人のツイッターユーザーが生産した20億のメッセージ、および20億のフォローリンクを分析してきた。そしてモデル化されたアルゴリズムで過去に出回ったフェイクニュースを検証した結果、90%の精度で「嘘」であることを見抜くことに成功したという。
なお同研究でフェイクニュースを人間に見せた際、それを「嘘だ」と見抜ける精度は約66%だったという。人間はメッセージそのものを見て真偽を判断するが、人工知能はメッセージの裏側にある「伝播パターン」を見抜くため精度に差が出るのだという。