2016年12月13日・14日の2日間、ザ・プリンスパークタワー東京と虎ノ門ヒルズフォーラムで国内最大規模のクラウド・イベント「Salesforce World TourTokyo 2016」が開催された。
14日には、「日本の凄い起業家達」をテーマにトークセッションが行われ、ラクスルの松本恭攝代表取締役、WHILLの杉江理CEO、ユーザベースの梅田優祐代表取締役社長が登壇。セールスフォース・ドットコムの古森茂幹副社長、フォーブス ジャパンの谷本有香副編集長(モデレーター)とともに、起業やイノベーション、成長についてのディスカッションを繰り広げた。
ミッションの先に、イノベーションベンチャーやスタートアップというと、つい“イノベーション”が先行しがちだが、数多くのスタートアップを支えてきているセールスフォース・ドットコムの古森氏曰く、成功している企業の共通点は「ぶれない経営」だという。
「業界が抱えていた産業構造の問題に対して、インターネットというツールを使ってアプローチをするやり方は昔から全く変わらない」と言う松本氏(写真下)は、創業時から「仕組みを変えれば、世界はもっとよくなる」というビジョンを貫いている。
杉江氏(写真下)も、「イノベーションを起こさなければならないと考えるのではなく、ミッションを実現するために、どう頑張って何ができるのかというシンプルな考え方が一番にくるのかなと思う」と、イノベーションという言葉にはとらわれることなくミッションに向き合っているという。
「破壊的なイノベーションの発想というのは、全て顧客のニーズにある」(古森氏)と言うように、どんな時もぶれずに顧客や課題に向き合い、それに沿った選択や変化を繰り返すことが、結果としてイノベーションや成功につながっていくのだ。
海外展開のカギは「ローカライズ」ラクスル、WHILL、ユーザベースの3社とも日本から海外へ進出しており、一方のセールスフォースはシリコンバレーから日本に参入している。海外展開を推し進めていく上で重要なことは何か。その答えは“ローカライゼーション”だと口をそろえる。
「オンラインサービスの特性上、ワンプロダクトで世界共通展開ができると思いサービスを展開したが、売上げが全く上がらなかった」と振り返る梅田氏(写真下)は「現地を知る重要性」を再認識。同様に海外市場のマーケットが全く違うことを肌で感じた杉江氏は、「会社のストラクチャを変えなければ意味がない」ことを実践から学んだ。ともに、ローカライズする重要性は“知っていた”が“体験した”からこそ身に染みて感じたという。
一方で、シリコンバレー発のスタートアップは一般的にローカライズを行わない。その中でセールスフォースが成功した要因は「プロダクトをマルチランゲージに対応させたこと」(古森氏)だと言う。
テクノロジーは変えることなく、それを届ける“コミュニケーション”をローカライズすることで、シリコンバレーの最先端技術を日本起業に提供する。サービスや進出先に合わせて「何をローカライズするか」を見極めることは、今後より重要になっていくだろう。
スタートアップが盛んなアメリカ、勢いに乗るインドなどと比較すれば、日本は起業がしにくい国、あるいは成功しにくい国かもしれない。しかし、梅田氏曰く「最近の日本の環境は恵まれていて、起業することはリスクではない」という今、「何のためのビジネスか」というビジョンを貫き、最適なローカライズをしていくことで、日本から世界を変えるようなイノベーションが生まれるかもしれない。