何よりも、米国議会は大規模な地政学的再編というゆるやかで巨大な動きに干渉しないよう求められ、干渉を試みるたびに憲法上の危機を招く恐れがある。結局のところ、外交は行政府の管轄事項だからだ。
この新たな安全保障体制について、最後にひとつ指摘しておきたい。この提案は西側の安全保障、すなわちNATO、欧州連合(EU)、米国、ウクライナなどに関する協議だが、そこにロシアが含まれている。これが現在の構想だ。これにより、(第2次世界大戦後の世界秩序の枠組みを形づくった)ヤルタ会談以降初めて、モスクワに西側の安全保障体制についての事実上の拒否権が与えられることになる。
中国の台湾侵攻はない?
現時点では、これらはいずれも中国を明示的に含んでいない。しかし、もし新たな対イラン攻勢が開始されれば、中国政府は軍事的またはその他の手段でテヘランを支援するというだけで、好むと好まざるとにかかわらず発言権を持つことになる。
ホワイトハウスは現在、中国に向けたイニシアチブを何も提案していないが、最大の懸念は中国が台湾侵攻によって主導権を握ることだ。ただ、ロシアと中国に関する地政戦略に関する著書を2冊執筆した筆者の見立てでは、それは起こらない。輸出への依存度が極めて高い中国にとって、そのような敵対的行為に起因する世界的な経済封鎖は決して許容できないからだ。帝国復興の野望に囚われているロシアと異なり、中国の習近平体制は経済成長の実現に正統性の基盤を置いており、経済の崩壊に耐えることは望んでいない。
ホワイトハウスが失うものは何もない
再びイランとの戦争が始まれば、湾岸の同盟諸国を再びイランの攻撃にさらし、各国はさらに米国から距離を置くことになるだろう。中東の米同盟国は、軍事的、経済的、個人的な対米投資が、安全保障面で何の利益ももたらさなかったことをすでに目の当たりにしている。イランの核兵器やイエメンのフーシ派を無力化するという最後の希望は、これまで同様に今回もきっと実現しない。
しかし、もはや失うものが何もなく、何をするにせよ議会からの絶え間ない逆風にさらされることを覚悟しているホワイトハウスにとっては、外交政策において考慮すべきこれらの事情はさしたる重要性を持たないだろう。


