ニューヨーク州の連邦判事は先月、人事管理局(OPM)が数百万人にのぼる現・元連邦政府職員の個人情報へのアクセスをDOGEのチームに認めたのはプライバシー法違反にあたるとの判決を下した。DDFは、元政府職員らが起こしたこの訴訟に関わった団体のひとつでもある。
キャンターにとって、OPMをめぐる判決はあくまで問題の存在を裏づけるものにすぎない。この判決により、触れてはならない保護対象のデータにDOGEがアクセスしていたことが確認された。だが、データがその後どう扱われたかについては、今回の判決は何も言っていない。また、データ駆動の企業群を経営するマスクは一般的な政府契約業者だとはとうてい言えない。
「DOGEは最も厳重に保護されている部類に入ると思われる情報に対して、前例のないアクセス権をマスクに与えました」とキャンターは言う。「彼はどのような情報にアクセスでき、どのシステムにアクセスできたのか。その情報をどう用いたのか」
キャンターは、議会が問うべきなのはアクセスの有無という範囲にとどまらず、情報の利用実態にも及ぶべきだと主張する。マスクはこのデータ対して、どのような権限を与えられ、どのような制限を課されたのか。データがマスクの企業のシステムに持ち出されたケースはなかったのか、といった点だ。
マスクは2025年5月、特別政府職員(SGE)の資格が失効するのに合わせてDOGEを去った。マスクはこの役職で給与を受け取っていなかったため、利益相反を明らかにし得る公開の資産・収入報告書を政府に提出する義務はなかった。
その後、マスクはトランプとの関係が一時悪化したが、やがて大統領と政府の信頼を再び取り戻していった。スペースXは今年、少なくとも80億ドル(約1兆2700億円)の国防関連契約を獲得しており、現在スペースX傘下のスペースXAI(旧xAI)が開発したチャットボット「Grok(グロック)」は国防総省で採用されている。
9月にはピート・ヘグセス国防長官が、未来の戦争に関する研究について助言する新たな諮問グループ「プロジェクト・メリディアン」にマスクが参加することを明らかにした。このグループにはニュート・ギングリッチ元下院議長や、国防関連企業アンドゥリル・インダストリーズの共同創業者パーマー・ラッキーらも名を連ねる。プロジェクト・メリディアンをめぐっては、それによって利益を得る立場にある人物が関与しているとして、3つの政府監視団体が今週、差し止めを求める訴訟を起こしている。
DDFはこのほど、マスクがDOGEを離れて以降、マスクの企業群は連邦政府との契約で少なくとも100億ドル(約1兆5800億円)を受け取ったとする報告書を公表した。これにはスペースXと国防総省の契約2件が含まれ、1件は42億ドル(約6700億円)規模、もう1件はミサイル防衛構想「ゴールデン・ドーム」に関する23億ドル(約3600億円)の契約だ。
透明性がほとんど確保されておらず、機微な情報へのアクセスを可能にするかもしれない新たなハイレベルの政府の取り組みにマスクが再び招かれたことは、DOGEをきっかけに生じた懸念をいっそう強めている。
「これはとてもおかしなことです」とキャンターは話す。マスクは連邦政府の契約業者であるだけではない。「一歩引いて、この人物が米国史上最大の政治献金者だという事実を認識すべきです」
テスラの株価は5日に約11%下落し、スペースXも約9%下げた。


