中国向け売上高を見込まない業績予想と半導体不足が交渉力を支える
エヌビディアは、最低販売比率を設けた理由を説明していない。しかし、同社の業績予想を見れば、クラウド事業者に厳しい条件を課せる余裕があることが分かる。
エヌビディアは2026年8月、2027会計年度第3四半期の売上高を1080億ドル(約17兆910億円)と予想した。中国からのデータセンター向け計算処理関連の売上高はまったく織り込んでいない。中国向けのデータセンター用半導体販売は、すでに業績予想から除外されている。
供給能力を超える需要があれば、半導体の買い手を選べる
さらに大きな理由は半導体の供給不足だ。エヌビディアは2026年10月、6社の取引先と協力して半導体の供給能力を拡大すると発表した。その際、最高経営責任者(CEO)のジェンスン・フアンは「需要は並外れている。制約は供給能力だ」と述べた。
半導体の供給がこれほど逼迫していれば、あるクラウド事業者が購入を見送っても、製品は順番を待つ別の買い手に回る。
我々は2026年5月、エヌビディアの中国向け半導体取引が頓挫した際にも同じ点を指摘した。中国の買い手向けに確保していた半導体は、購入を待つ大規模クラウド事業者(ハイパースケーラー)や各国政府に回ると論じた。最低51%という条件でも、中国企業が利用するはずだった計算能力は他の地域の顧客に振り向けられる。
中国企業へのGPU貸し出しに依存する小規模事業者が負担を負う
中国企業へのGPUの計算能力の貸し出しで事業を築いてきた小規模なクラウド事業者には、販売条件が重荷となる。シンガポールに拠点を置く事業者の1社はFTに対し、米国外で中国企業以外の顧客を十分に確保するのは難しいと語った。
我々は以前から、GPUの計算能力を貸し出す小規模クラウド事業者を、AI関連投資で最もリスクの高い領域と見てきた。借り入れに頼って事業を営む企業が非常に多いからだ。貸し出し事業者が新たな販売条件に伴う負担を抱えても、エヌビディアは生産できる半導体をすべて売り切る。
エヌビディアの声明は、提携先のデータセンターを米国のAI競争力を支える設備と位置付けている。クラウド事業者が世界中の顧客を獲得し、米国のAI産業の競争力を高めるべきだという考えが表れている。
2026年11月4日の時点で、エヌビディアがクラウド事業者に中国企業以外へのサービス販売を過半とする条件を伝えていたと報じられていた。11月17日に予定される決算発表まで、約2週間という時期だった。買い手が順番待ちする供給企業だからこそ、取引先に条件を課せる。
エヌビディアは顧客を選ぶ立場にある。投資家は同社株の保有を検討すべきだ。


