アップルが10月末に発表した「PROLED XDRディスプレイ搭載MacBook Pro」は、Macとして初めてディスプレイのタッチ操作に対応した。筆者は、本機の革新性をタッチだけで語るのは惜しいと感じている。
開発の出発点にあったのは、プロフェッショナルのためのツールとして、MacBook Proをさらに進化させるには何が必要かという問いだ。その答えの中心に据えられたのが、豊かな明暗と色彩を表現する有機EL方式のPROLED XDRディスプレイだった。
ベースラインとなる14インチ、M5 Proチップのモデルは税込価格49万9800円となる。
プロフェッショナルが信頼できるOLEDの追求
最初に「液晶」と「有機EL(OLED)」の違いを整理しておきたい。現在の液晶ディスプレイはLEDバックライトの光を液晶で調節しながら映像をつくる。明るい画面を安定して表示しやすく、従来からMacBook ProもミニLEDによる高精度なバックライト制御により、高いコントラストを再現してきた。
一方で、有機ELはパネルを構成する画素そのものが自発光する。画素ごとに光を明滅できるため、暗い背景に小さな強い光があっても、理論的にはその周囲に光を滲ませることなくピーク部分のきらめきを描ける。反対に画素を発光させなければ暗部の黒色が深く沈む。バックライトが要らないことから、ディスプレイを薄くできる利点もある。ただし、画面全体の明るさや消費電力、寿命には設計上の配慮が必要であり、様々な面でOLEDばかりが優れているわけではない。
本機に搭載されるPROLED XDRディスプレイは、発光層を2層重ねるタンデムOLEDを採用する。アップルの説明ではHDRコンテンツを表示した時のピーク輝度性能は2000nitsに到達する。コントラスト比は1000万対1。なお従来のLiquid Retina XDRディスプレイ(液晶)を搭載するMacBook Proはピーク輝度性能が1600nits、コントラスト比は100万対1だ。P3に加えてAdobe RGBの色域にも広げたことで、映像だけでなく印刷物や実物のグラフィックス制作物における色再現性も向上する。
筆者がiPhone 18 Proで撮影したHDRビデオを、OLEDのMacBook Proと、液晶のMacBook Proに表示して見比べた。ハワイアンダンスの演者たちが身に着ける衣装やアクセサリーを照らす、スポットライトの強い光が自然に煌めく。同時に背景の夜闇の漆黒も、ひとつの画面に生々しく描き分ける。明部・暗部の緊張感だけでなく、光や色の繊細なグラデーションを高精度に描き分ける表現力も、PROLED XDRディスプレイの強みだ。
映像や写真、グラフィックスの制作物を手がけるクリエイターが「手軽に持ち歩けるリファレンスモニター」として、OLEDのMacBook Proを選択する意味は大きいと思う。仕事環境のレベルアップが期待できるだろう。



