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スポーツ

2026.11.08 13:15

「試合のない日」に稼ぐ 長崎スタジアムシティが日本のスポーツビジネスに突きつけた数字

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本当に問われるのは「採算と持続性」

では、スタジアム・アリーナ事業の関係者は何を見るべきか。

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それは、波及効果の大きさよりも事業そのものの採算である。このリポートは運営管理費を除いた「売上ベース」で算出されており、二重計上を避けた保守的な設計だ。ただし、同リポートは事業の採算を論じるものではない。約1000億円の総事業費が、果たしてどう回収されるのかは、リポートからは見えない。

今後、この賑わいが持続するのか、賑わいが落ち着いたときに耐えられるビジネス構造なのかも、気になる点だ。ホテルやオフィスの契約期間、テナントの退店率、アリーナの稼働率といった地味な指標が、本当の実力を映す。

クラブ側にも、持続性という課題はある。

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V・ファーレン長崎の需要89.4億円のうち、スポンサー・その他が34.2億円と最大項目を占める。2026年はJ1昇格という「ソフトの飛躍」で押し上げられた数字である以上、成績が振るわなかった年に効果がどれだけ縮むのかも、事業計画には織り込んでおく必要がある。波及効果が大きい点と、民間の投資が成立する点は同じではない。市の事業が連動する以上、採算面を含めた検証が、いずれ議論になるはずだ。

日本のスタジアム・アリーナ事業への示唆

それでもなお、このリポートが提示する論点は重みがある。

一つ目は、評価指標の転換である。収容人数や平均観客数ではなく、「非試合日の稼働と売上」を最初のKPIに置くべきという示唆。試合のない日にどれだけ人が来て、いくら使うか。設計段階から事業計画に組み込まれていなければ、箱は再び「年間数十日の施設」に戻る。

二つ目は、複合化と宿泊の取り込みである。ホテルやオフィスは試合日程と無関係な収益を生み、県外客の宿泊は来訪消費を県内の純増に変える。一方で、効果の約半分が施設の外へ広がることは、地域の理解を得る力にもなる。周辺の消費をどこまで事業主体が取り込み、どこから地域に開くのか。収益性と地域波及のバランスをどう設計するかが問われる。

三つ目は、数字の開示姿勢だ。このリポートは宿泊率の根拠や自給率フィルター、売上ベースの採用など、算出ロジックを細かく開示している。議会や金融機関、住民に向けて「削っても揺らがない数字」を示す姿勢は、公共性の高い大型投資にこそ求められる。次の段階は、その開示を事業の採算にまで広げることだろう。数字の透明性が高いほど、他地域は成功と失敗の両方から学ぶことができる。

長崎モデルが他地域でそのまま再現できるとは限らない。長崎の地理的条件や、通販事業で培った資本力、スポーツと不動産を一体で運営する体制は、簡単に複製できるものではない。

それでも「スタジアムは誰のための投資なのか」という問いは、すべての構想に共通する。この問いに、地域経済への波及と事業としての持続性の両面から答えられる構想だけが、次の時代に残っていくだろう。試合日の熱狂だけでなく、試合のない日の日常にこそ、日本のスタジアム・アリーナ・ビジネスの勝ち筋が見えてくる。長崎は、その仮説を検証するに値するモデルを示している。

文=松永裕司

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