投資家が集まる場で中国株の話題を出せば、反射的に返ってくるのは「投資不可(uninvestable)」という言葉だ。その理由は以前からさほど変わっていない。中国は中国共産党が統治する一党支配国家である。北京は自国経済を「社会主義市場経済」と呼ぶが、そこでは国家が一夜にしてルールを書き換えることができる。そして中国経済は新型コロナウイルス以降、苦戦を続けている。
問うべきは、中国株にリスクがあるかどうかではない。誰もがすでに認識しているそのリスクに対して、十分な見返りを得られているかどうかだ。すべての資産には適正な価格がある。著名投資家ハワード・マークスがかつて述べたように、「重要なのは何を買うかではなく、いくらで買うか」である。
MSCI中国株指数は予想PERが9.5倍であるのに対し、S&P 500は18.6倍となっている。中国の優良企業のなかには、他国では考えられないような高値で取引されているものもある。米国の金融アナリティクス企業ファクトセットによれば、中国最大のテクノロジー企業であるテンセント(騰訊)の予想PERは、2027年のコンセンサス利益ベースで10.8倍にすぎない。他社への出資分を除外すれば、実質的な倍率は7.8倍まで下がる。投資持株会社プロサスを介してテンセントの株式を取得すれば、実質コストはさらに割安になる。
WeChatからTemu、スポティファイまで:テンセントの圧倒的なリーチ
テンセントはスーパーアプリ「微信(WeChat)」を通じて中国の日常生活のインフラを握り、月間アクティブユーザー数は14億人に達する。WeChatは、WhatsAppのようなメッセンジャー、フェイスブックやインスタグラムのようなソーシャルフィードと広告プラットフォーム、Apple Payのような決済ウォレット、グーグルのような検索エンジン、そしてアプリストアを、すべて1つのアプリに統合している。テンセントはまた、世界最大のモバイルゲームパブリッシャーであり、中国第2位の決済企業でもある。
テンセントは過去25年で、最も優れたベンチャーキャピタル投資家の1社だった。同社は、総額1140億ドル(約18兆円)におよぶ国内外の上場・非公開企業への投資ポートフォリオを保有する、実質的なハンズオフ型のベンチャーキャピタリストだ。現在もポートフォリオに残る企業名には驚くものがあるかもしれない。Temuの親会社であるPDDホールディングスの株式の約14%、シンガポール拠点のSeaの17%、ユニバーサル ミュージック グループの12%、ワーナー ミュージック グループの5%、スポティファイの8%、レディットの7%、スナップの15%などである。さらに、フォートナイトを手がける非公開企業Epicの約28%も保有している。同社株は2012年に3億3000万ドル(約522億円)で取得したもので、直近の資金調達ラウンドに基づけば現在の価値は60億ドル(約9500億円)超に達する。また、ディスコードの初期投資家でもあり、現在も非公開株式として保有している。上場株式と非公開株式の比率はおおむね50対50である。



