太陽圏を脱出して「星間空間」へ
ボイジャー1号の旅のハイライトのひとつが、「太陽圏界面(ヘリオポーズ)」の突破だ。
太陽からは、太陽風と呼ばれるプラズマ(荷電粒子)が放射状に発せられている。太陽風が届く領域は「太陽圏(ヘリオスフィア)」と呼ばれるが、太陽風は遠方に行くほど希薄化され、勢いもなくなる。そのため太陽圏は、太陽を中心とした卵のような形態となる。その卵の殻の部分が太陽圏界面(ヘリオポーズ)だ。ボイジャー1号は2012年8月25日、史上初めてこの境界線を超えた。また、約6年後の2018年11月には、ボイジャー2号も同じくこれを通過した。
太陽圏の外側は、「星間空間」と呼ばれる。星間空間とは、恒星と恒星の間に広がる領域を意味する。つまり宇宙には、我々の太陽などを核とした太陽圏という風船が、星間空間という大海にいくつも浮かんでいるような状態といえる。ボイジャー1号は、その外洋に出たのだ。
ボイジャー1号が星間空間に出たことは、辛うじて稼働している2つの観測機器によって裏付けられた。ボイジャー1号が太陽から遠ざかるにつれて、太陽から発せられるプラズマは徐々に低減していったが、ある時点でその数値が40倍に跳ね上がることを「プラズマ波サブシステム(PWS)」が検出したのだ。これは、太陽風が支配する領域を抜け出し、星間物質の海に出たことを意味する。また、PWSはプラズマのデータに加えて「宇宙線」の増加も検出した。それまで太陽圏のバリアに守られていた、天の川銀河から降り注ぐ低エネルギーの銀河宇宙線の数値が、数倍まで跳ね上がったのだ。
「磁力計(MAG)」もその変化をキャッチした。太陽圏内においては太陽の磁場が支配的だったが、ある瞬間に周囲の磁場の方向や強さが変化した。これらのデータよってJPLの科学者は、ボイジャー1号が「星間磁場」の領域に入ったことを確認した。
ボイジャー1号の磁気テープ(DTR)による記憶媒体は、すでに2015年に運用を停止している。現在使用されている半導体メモリは約69キロバイト、サブシステム(CCS)は約8KB程度の容量しかない。そのため、ボイジャー1号からの観測データは、ほぼリアルタイムで地球に向けて発信されている。
太陽圏の外側には、太陽系を取り囲むように「オールトの雲」が存在するとされる。それは太陽から約1000~10万AUの距離に分布すると予想されているが、ボイジャー1号の速度では、そこに到達するまでに最低280年かかり、抜けるには2万8000年かかる。
RTG(発電機)の電力低下を考慮すれば、ボイジャー1号の運用寿命は2030年前後までと思われる。つまり、あと数年で運用限界を迎えるが、ボイジャー1号はその後も飛び続け、いつか孤独にオールトの雲を通り抜け、太陽の重力圏からも離脱するはずだ。


