48時間にわたる通信途絶
10月18・19日には、ボイジャー1号と通信できないトラブルも発生した。JPLは、米国、スペイン、オーストラリアに設置された大型アンテナで構成される深宇宙ネットワーク(DSN)を介してボイジャーと交信しているが、24時間間隔で実施された2回の通信試験において、ボイジャー1号からの信号を検出できないという事態が発生したのだ。つまり、計48時間にわたって通信が途絶したことになる。ただし、この通信支障は10月20日には復旧され、現在は健全な通信状態を維持している。
通信途絶の原因は、スラスタ(姿勢制御装置)の不具合が考えられる。ボイジャーが地球へ信号を送信するには、高利得メインアンテナを常に地球に向け続けている必要がある。その機体姿勢を調整するのがスラスタによる噴射だ。今回、作動中のスラスタの1基に異常が検知され、コンピュータがそれをオフラインにし、バックアップが作動した。こうした切り替えは機体を保護するために、自律的に行われるようプログラムされている。その際、通常運用の一部である通信も停止された。
スラスタの燃料にはヒドラジンが使用されているが、その配管内に堆積物が生じるため、一部のスラスタはすでに使用不可となっている。そのためJPLは2024年、スラスタの交換作業を行った。つまり、配管が詰まったスラスタを、2018年以来使用されていないスラスタに切り替えたのだ。
JPLは、搭載コンピュータの修正パッチを片道1日かけてボイジャーに送信し、これによって2025年5月には、ロール軸運動用のバックアップスラスタを復活させることに成功した。ただし、今回の不具合によって、スラスタの劣化がさらに進んでいることが明らかになったといえる。JPLによると、ヒドラジンの残量は、あと10年分はあるという。
土星の衛星タイタンを優先
ボイジャー計画の端緒は、ゲイリー・フランドロ氏の発見にある。1964年、当時JPLのインターン生だったフランドロ氏は、外惑星(地球の公転軌道の外側にある惑星)を探査する際に有用となる軌道を研究するよう命じられた。そしてある時期、木星から海王星に至る4つの巨大惑星が、稀有な配列を形成することに気付く。その機会を利用し、各惑星の重量を利用したフライバイ航法を使えば、単一の探査機が複数の惑星に到達することができると考えられた。この発見に注目したJPLは、「グランドツアー」と呼ばれるミッションを立案し、ボイジャー1号と2号を打ち上げることになった。
その結果、ボイジャー1号は木星(1979年)と土星(1980年)を訪れ、ボイジャー2号は木星(1979年)、土星(1981年)、天王星(1986年)、海王星(1989年)に到達した。冥王星も観測候補のひとつではあったが、ボイジャー1号は土星の衛星タイタンへの近接観測を優先することになった。これに先立ち、土星に初到達(1979年)したパイオニア11号の近接観測によって、タイタンには生命存在の可能性が認められ、その複雑な大気層にも注目が集まっていたからだ。冥王星は後年、NASAの探査機「ニューホライズンズ」が2015年に初到達を果たしている。
タイタンへの接近を優先したボイジャー1号は、太陽系惑星が平面的に並ぶディスク状の黄道面から大きく外れる軌道(黄緯35度)に入ることになった。そのため後続ミッションでは他の天体を目指すことはできず、現在では極端に天体がまばらな孤独な空間を飛び続けている。


