ユーザーの時間を奪わない、新しい成長モデル
今年、ピンタレストは「Less URL. More IRL.」というビジネスステートメントを掲げた。IRLとは「In Real Life」つまり現実の生活を指す。「オンラインの滞在時間を延ばすことよりも、そこで得たアイデアを現実世界で活かしながら、充実した時間を過ごしてほしい」というユーザーに対するメッセージでもある。
利用時間を最大化しないサービス設計と、広告収益の拡大は両立するのだろうか。一般的なSNSではユーザーの滞在時間やエンゲージメントが重要な評価指標になる。ブラウン氏は、このようなサービス設計がユーザーの過度な利用につながるリスクを指摘する。
「ピンタレストはユーザーのアテンション(注意)を奪うことではなく、インテンション(意図)を理解することに重きを置いています。探しているものをピンタレストで効率よく見つけて、その後の時間は現実の生活で楽しんでもらいたいからです」
同社が進める安全性への取り組みも、このような思想と深く結び付いている。ピンタレストは若年層ユーザーのプライバシー保護を強化し、16歳未満のユーザーのアカウントを原則非公開にする仕組みなどを導入してきた。
「規制によって求められたからではありません。私たち自身がサービスのあるべき姿を考え、正しいと判断して自主的に取り組みました。事業の成長を鈍化させるリスクも懸念しましたが、結果として、安全で安心できる環境づくりがユーザーの増加を後押ししたと考えています」
ブラウン氏は、ポジティブなコンテンツが充実しているだけでなく、安心して利用できる環境そのものが、ピンタレストがZ世代から支持を集める理由であると説く。
最後にブラウン氏が思い描く「3年後のピンタレスト」の姿を聞いた。
「ビジュアル検索を中心に、AIを活用したショッピングを実現し、広告のパフォーマンスを正確に測定できるプラットフォームになっているはずです。この取り組みをグローバルに展開していきます」
現在のピンタレストにはサービスを世界に広げるだけでなく、海外ユーザーの増加を広告収益の成長につなげるという課題がある。日本でも独自の文化に根ざしたコンテンツの充実と、企業による広告活用の拡大が鍵を握る。
AIの発展により、ユーザーは自身が求めるものを正確な言葉で表現しなくても、探しているものを効率よく見つけられるようになるかもしれない。そして自分が意識していなかった自身の好みや、新しい可能性に出会う機会も増えていく。
ユーザーの時間を奪い合うのではなく、現実の生活を豊かにするためにテクノロジーを使う。ブラウン氏が語ったピンタレストの成長戦略は、AI時代のデジタルプラットフォームが目指すべき方向性のひとつを示している。
連載:デジタル・トレンド・ハンズオン
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