AIには取れないリスクを取る
──AIが企業分析や財務モデルの構築まで担える時代に、人間のアナリストの価値はどこにあると思いますか。
ひとつは、一次情報を取りに行くことです。歯科医院の話のように、人と人とのコミュニケーションでしか得られない情報は、世の中にたくさんあります。それを貪欲に取りに行き、人から引き出すのは人間にしかできません。役職が上がれば、案件そのものを取りに行く営業も担います。それこそAIにはできない仕事です。
今は、案件で出てきた不動産を実際に見に行っています。ビルなら周りの様子や、どんな人が歩いているか、駅からの人の流れ……。築年数は分かっても、修繕しているかどうかなどは現地で分かることがあり、「もっと長く使えるのではないか」と考えられる。机上では商業施設に向いた地域だと考えて業績予想を立てていても、行ってみたら静かな住宅街だったということもあります。
もうひとつは、リスクを取ることです。リスクを取り、その責任を最後まで負い続けることは、人間にしかできません。投資した後に何を考え、どう行動したのか。プロになれば、そこが必ず問われます。
──実際に、リスクと責任を実感した場面はありますか。
例えば債権を入札で買う場合、入札額を決めなければなりません。若手がしっかり手を動かしてキャッシュフローを予想し、バリュエーションをして、上司と壁打ちをする。それを社内の投資審査の場でプレゼンすることを、今の段階からさせてもらっています。自分が出した業績予想が、その後3〜5年保有する中で本当に責任を取れるものなのか。日々考えています。
入札に負けると悔しいですが、勝っても「なぜ他社は自分たちよりも高い値段をつけなかったのか」と考えます。お互い腹の探り合いです。高値づかみをしていないか、勝ったうれしさと同時に不安も感じる。株なら何%下がったら売ると機械的に損切りできますが、私たちは買った後、そう簡単には売却できません。この業界に入らなければ知らなかった感覚です。
──最後に、Gyoseki大会に挑む学生たちへメッセージをお願いします。
自分の仮説を大事にし、違和感をしっかり検証してほしいと思います。「これってどうなんだろう」と思ったら徹底的に調べ、「それならこうではないか」と仮説を積み重ねていく。そういう検証をすることで、株価が実際に上がったら「正しかった」と分かる。私はそのプロセスが好きでした。もちろん大会では優勝を目指すべきですが、考えるプロセスも含めて、すべてを楽しんでほしいです。
Gyoseki大会では、企業分析やExcelの基礎から、プロとどうコミュニケーションを取り、自分の意見をどう伝えるかまで、一通り経験できます。金融業界を目指す人に限らず、役に立つはずです。私も「もっと早く知っていれば」と思いました。年齢・大学関係なくさまざまなバックグラウンドの人に挑戦してみてほしいです。特に、地方の大学からも多くの学生が参加してくれることを期待しています。

菅原康生◎大和PIパートナーズ 債権・不動産投資第1・2部 アナリスト。2026年3月、京都大学工学部物理工学科卒業。同4月大和証券入社、大和PIパートナーズへ配属。


