多くの経営幹部は、社内流動性を高めたいと口にする。しかし、高い成果を上げている従業員が別のチームへの異動を受け入れると、そのマネジャーは「どうやって穴を埋めればいいのか」と頭を抱えることになる。
この異動は組織にとっては好ましいものだ。会社は貴重な社員を引き留められ、受け入れ側のチームは必要な能力を得て、本人は成長の機会を得る。しかし、その人材を育ててきたマネジャーは、空いたポジションとチーム再建という課題に直面することになる。
結果として、人材を抱え込もうとするのは合理的な反応といえる。
企業はしばしば「人材の囲い込み」をマネジメントの問題として扱うが、実はインセンティブの問題であることが多い。マネジャーはチームの成果に対して責任を問われる一方で、優秀な人材を社内の他部門へ送り出すことに対してはほとんど評価されない。
組織全体のために人を育てよと言いながら、自分のチームを無傷で維持することに対して報いているのだ。
その結果は目に見える形で現れている。社員の3人に1人は社内の別のポジションでより大きな影響を与えられると考えているにもかかわらず、ガートナーの調査では「スキルギャップを埋めるために人材を効果的に動かせている組織は20%未満」であることが明らかになっている。同調査は、社員が感じるリスクと、優秀な人材を抱え込もうとするマネジャーの衝動が、流動性の障壁になっていると具体的に指摘している。
リーダーが社内流動性を会社運営の一部として根付かせたいなら、「優れた人材マネジメントとは何か」の定義を変える必要がある。
人材は会社に属する
最近、社内流動性について私のチームと話し合った際、私たちはマネジャーが使う言葉に何度も立ち返った。「私のチーム」「私の部下」「私のトップパフォーマー」といった表現である。
こうした言い回しは自然に出てくるものだが、同時に、レポートライン(指揮命令系統)が人材に対する「所有感」を生み出している実態をも映し出している。
優秀な社員は、個々のマネジャーの所有物ではない。そのスキル、組織的な知識、将来の可能性は組織に属している。その社員がより大きく貢献できるポジションに移れば、たとえ一つのチームが一時的な痛手を被ったとしても、会社全体としては利益を得る。
CEOと経営陣は、この原則を明確に打ち出さなければならない。社内異動を、あるマネジャーが別のマネジャーを犠牲にして勝ち取るものとして扱ってはならない。人が最も影響力を発揮できる役割に就くとき、それは会社にとっての勝利なのだ。
これは事業の優先順位が変化するときに特に重要になる。マネジャーが邪魔立てすることなく、最も重要な課題や機会に向けて最良の人材を動かせる体制が必要だ。
人材を育てるマネジャーを評価する
ほとんどの企業は、どのマネジャーが継続的に数字を出しているかを把握している。しかし、どのマネジャーが継続的に将来のリーダーを輩出しているかを把握している企業は少ない。
これは機会損失である。人を育てる能力は、リーダーシップの成果として評価されるべきだ。社員をより大きな役割に備えさせ、有能な後継者を育て、他チームに人材を送り出すマネジャーは、自身の直接的な責任範囲を超えて組織を強化しているのである。
リーダーは次のような観点に目を向けるべきだ。
・このチームの社員は、将来の機会に備えるスキルを身につけているか?
・マネジャーは重要なポジションに対して信頼できる後継者を用意しているか?
・チームメンバーはより責任の重いポジションに移っているか?
・短期的な困難を招いても、マネジャーは社内候補者を支援しているか?
・他のリーダーは、このチームを優れた人材の供給源と見なしているか?
社内異動をノルマ化すべきではない。チームによって流動性が自然に高いところもあれば低いところもあり、異動の多さだけが育成力の高さを示すわけではない。だが、傾向は重要だ。他部門で成功する人材を繰り返し育てているマネジャーは、会社に価値を生み出している。
その貢献は、リーダーシップ評価、後継者計画の議論、そして表彰の場で見える形になっているべきだ。
マネジャーを「唯一のゲートキーパー」にしない
多くの企業では、社員が社内の機会に手を挙げるには依然としてマネジャーの判断に依存している。上司が推薦するか、必要なスキルを持っていると認める必要があるのだ。
マネジャーは育成や異動計画において役割を果たすべきだが、社員が社内で自らの将来を模索できるかどうかに対して一方的な決定権を持つべきではない。
組織には、職位やマネジャーの推薦を超えて、社員のスキルと実証された能力を最新の形で把握する仕組みが必要だ。業務、目標、フィードバック、育成状況に基づいて適任者が浮かび上がるようになれば、機会は影響力のあるマネジャーや適切な非公式ネットワークへのアクセスの有無に左右されにくくなる。
テクノロジーは能力の可視化を進め、ゲートキーピングを減らすことはできるが、文化そのものを変えることはできない。興味を示すことが不忠実とみなされる、あるいはマネジャーがあらゆる異動を阻止できる環境では、社員は社内公募システムを使おうとはしない。
問題は必ずしもリーダーがキャリア開発に反対していることではない。企業がそれを支える条件を整えていないことだ。LinkedInの2025年版「職場学習レポート」によれば、リーダーシップのサポート不足をキャリア開発の大きな障壁と考える組織は11%にとどまる。しかし、50%の組織はマネジャーに必要な時間とリソースが不足していると回答している。
マネジャーは原則として流動性を支持しているかもしれないが、インセンティブや後任を補充する計画がなければ、実際には難しい。社内流動性が本物になるか、それとも採用ページに掲げるだけの飾りで終わるかは、リーダーの行動次第である。
「人材を失う」の意味を再定義する
優秀な社員が会社を去れば、組織はその能力、組織的知識、将来の可能性のすべてを失う。しかし、その社員が社内で異動すれば、組織はそのすべてを保持できる。
この2つの出来事を同じように扱ってはならない。
マネジャーが喪失感を覚えるのは当然であり、リーダーはそれが引き起こす混乱を軽視すべきではない。しかし、会社はマネジャーが成し遂げたことも同時に認めるべきだ。すなわち、誰かをより高いレベルで、あるいは事業がより必要としている領域で貢献できる人材へと育てたという功績である。
最良のマネジャーは、自分のチームを超えて活躍できる人材を育てる。
社内流動性を高めたいのであれば、企業はマネジャーが引き留めた人材だけでなく、育てた人材に対しても報いるべきだ。



