UAEの計画的な電力供給がAI開発企業との交渉で強みになる
最先端AIの開発では、電力の確保が決定的な制約になっている。米国では、大量の電力を必要とする新たな施設が、送電網への接続を数年間待つ場合がある。アブダビは、米バージニア州やテキサス州では確保しにくい、計画的に整備された大規模で安定的な電力供給体制を提供できる。
AI用データセンターに大量の電力を供給できる理由の1つが、UAEの発電設備の規模だ。バラカ原子力発電所には4基の原子炉があり、UAE全体で使う電力の最大4分の1を供給できる。さらに、広域の計画である「UAE・米国AIキャンパス」には、原子力、太陽光、天然ガスで発電した電力を供給する予定だ。
計画的に電力を確保できることは、UAEがAI開発企業と交渉する際の強みになる。エネルギー輸出国は長年、供給が限られる資源を生かして長期の顧客を確保してきた。湾岸諸国は同じ考え方を、AI向けの計算設備にも応用し始めている。
AI開発企業は、米国では容易に確保できない計算能力を湾岸地域で利用できる。設備を使い始める時期も、送電網への接続待ちではなく、計画的な電力設備の整備状況によって決まる。
LNGの長期契約がAI向け設備利用権の先例となる
資金と設備利用権を組み合わせる取引に最も近い先例は、液化天然ガス(LNG)だ。カタールの初期のLNG事業が融資を受けられたのは、信用力のある電力・ガス会社が、LNGを長期にわたって引き取る契約を結んだからだ。買い取りの約束によって、天然ガスを液化する設備の建設資金を集められた。
市場が成熟すると、LNGの輸送先を柔軟に変えられる契約が増えた。LNGそのもの、輸送、資金調達は切り離され、世界各地でそれぞれ独立した取引対象となった。
AI向け半導体やメモリーも国境を越えて調達
AIの計算資源も、複数の国や企業が役割を分担する方向へ進んでいる。電力を生む場所、半導体を設計する場所、メモリーの供給元、資金の出し手は、それぞれ異なる国や地域に分かれる。完成した学習済みAIモデルは、通信ケーブルを通じて国境を越える。なかでも見落とされやすいのが、メモリーの供給だ。
OpenAIは2025年10月、韓国のサムスングループとSKグループとの提携を発表した。メモリー半導体の増産を担うのは、サムスン電子(Samsung Electronics)とSKハイニックス(SK hynix)だ。両社は、AIインフラ計画「Stargate」向けに、DRAMの製造工程へ投入するウエハーの枚数を合計で月90万枚とする目標を掲げた。
OpenAIが得る計算設備の選択権は、必要に応じて引き取り量を変えられる初期の購入契約に似ている。米国の送電網に余力がないときに湾岸の計算設備を利用できるようにし、ワシントン、ソウル、アブダビにまたがる供給網に組み込む仕組みだ。


