資金と計算設備の利用権を組み合わせる契約の狙い
過去10年の大半、湾岸諸国の資金は、米国のテクノロジー企業の少数株式を取得する形で投じられてきた。投資収益は主に投資先の企業価値で測られ、ソフトウェアを支える物理的な設備とはほとんど結び付いていなかった。今回の契約案は、株式への出資と計算設備の利用を結び付ける。
FTが資金調達予定額の引き下げを報じる前に、米経済ニュース専門局CNBCはOpenAIが進める別の交渉を伝えていた。OpenAIは株式による資金調達と並行し、UAEで追加の計算設備を利用する商業契約も交渉しているという。
OpenAIは投資家に、2030年までに計算資源へ6000億ドル(約94兆8000億円)を投じる計画だと説明したという。これほど巨額の支出を計画する企業にとって、必要なときに計算設備を使える権利は、調達する現金にほぼ匹敵する価値を持つ。
長期の賃借契約を結ばずに設備を確保できる
OpenAIが得るのは、設備を必ず借りる義務ではなく、必要に応じて借りられる選択権(オプション)だ。OpenAIは早ければ2027年にも上場する可能性がある。選択権を確保すれば、上場前から複数年にわたる固定的な賃借契約を抱えず、必要なときに設備を利用できる。設備を供給する側にとっても、将来の需要を見込める強い材料になる。
選択権の対象となる施設や、設備を供給する企業は報じられていない。湾岸地域で最も開発が進んでいるのは、1ギガワット規模の計算施設群「Stargate UAE」だ。G42が建設し、OpenAIとオラクルが運営を担い、エヌビディア、米シスコシステムズ、ソフトバンクグループ株式会社がパートナーとして参加する。最初の200メガワット分は2026年の稼働が予定されていた。
MGXの投資先は半導体からAI研究開発企業まで広がる
設備の利用権を伴う出資は、MGXが築いてきた投資先の構成にも合う。MGXは2026年7月、投資ファンド「MGX Fund I」の最終調達額が490億ドル(約7兆7420億円)に達したと発表した。OpenAIやアンソロピックなど、最先端AIの研究開発企業にも出資している。
同じ7月、MGXはデータセンター開発企業Aligned Data Centersの買収を完了した。買収には、AIインフラへの投資を促す枠組みAIPと、資産運用会社ブラックロック傘下でインフラ投資を手がけるGIPも参加した。買収時の企業価値は約400億ドル(約6兆3200億円)だった。
半導体分野では2025年、投資会社Silver Lakeと共同で、インテルからアルテラ(Altera)の株式51%を取得した。アルテラは、用途に合わせて回路構成を変更できる半導体を手がける企業だ。MGXは、半導体やデータセンターからAI研究開発企業まで、AIを支える幅広い分野に投資すると説明している。今回の設備利用権を伴う出資も、MGXの投資戦略に沿ったものだ。


