さらに、カスピ海横断パイプラインについては、イラン紛争に加え、同地域周辺で繰り広げられているもう1つの紛争であるウクライナ侵攻を背景に、接続性の向上に向けた計画が加速している。
アルメニアと米国は5月下旬、「国際平和と繁栄に向けたトランプ回廊」の実現に向けた基盤を築く新たな枠組みについて合意した。アルメニアと隣国のアゼルバイジャンを結ぶ同回廊は、2025年8月に米ホワイトハウスで開かれた首脳会談で合意された構想で、長年宿敵関係にあった両国の和平プロセスの中核的な要素になっている。
さらに、同回廊の接続先として想定されている、より広範な「中央回廊」には大規模な資金が投入されている。世界銀行は6月、同回廊沿いの鉄道貨物輸送能力の向上と主要道路区間の整備を目的とした3億7200万ドル(約590億円)規模のジョージアの計画を承認した。これに先立ち、世界銀行は2月、カザフスタン国内の回廊区間を改善するために14億1000万ドル(約2200億円)の金融保証をしていた。
中央回廊の潜在力は計り知れない。世界銀行によれば、十分な投資と社会基盤整備が行われれば、カスピ海横断パイプラインは貿易の大動脈へと変貌を遂げる可能性を秘めている。これにより、2040年までに輸送量は4倍に拡大する一方で、輸送時間は3分の2に短縮されることが見込まれている。
さらに視点を広げると、他の地域でも動きが見られる。長年構想されてきた「インド・中東経済回廊」でも、ここ半年間で大きな進展があった。同回廊はアラビア半島と東地中海を経由してインドと欧州を結ぶ貿易と社会基盤のネットワークとして構想されている。インドのナレンドラ・モディ首相が5月にアブダビを訪問した際、同回廊のデジタル基盤の主要部分が稼働開始した。これは、インドとUAEの税関と港湾当局をデジタルで接続し、将来的な貿易拡大を円滑にすることを目的としている。一方、イタリアは同回廊の欧州における主要な玄関口となるべく取り組みを強化しており、海上輸送や港湾協力の分野でインドとの新たな連携を築いている。
当然、これらの取り組みの全てが一夜にして、あるいは近い将来に実現するわけではない。しかし、ペルシャ湾とその周辺地域で地域プロジェクトが加速していることは、国際社会が貿易の代替経路を構築しつつあることを示しており、イランの戦略的立場は時間の経過とともに悪化の一途をたどるだろう。イラン政権に対する影響力を模索している米国にとって、これは間違いなく朗報だ。


