欧州には、基盤モデル開発に対する別のアプローチも存在する。
スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)と同ローザンヌ校(EPFL)が後押しする「スイスAIイニシアチブ」は、2026年7月に「Apertus 1.5」を公開した。このモデルは、推論能力の向上、マルチモーダルな理解、学習方法に関する情報へのアクセスを提供する。スイス公共放送協会の『Swissinfo』によると、9月までにApertusのダウンロード数は400万回を超えた。開発者によると、少なくとも70件の外部導入が報告されている。
OpenEuroLLMなどの欧州のイニシアチブも、欧州大陸の多言語要件に合わせて設計されたモデルの開発に取り組んでいる。ダウンロード数だけでは有意義な商業的採用を証明できるわけではないが、これらの数値は強い関心の高さを示している。
しかし、オープンウェイトAIは必ずしもオープンソースAIではない。モデルの重みにアクセスできるからといって、開発者が学習データ、学習コード、あるいはモデルを修正して再配布する無制限の権利を有しているわけではない。主権(ソブリン)を重視する組織にとって、これらの違いは極めて重要だ。
欧州各国政府もAIインフラに巨額の投資を行っている。
欧州委員会は7月、最大7カ所の「AIギガファクトリー」を建設する計画を発表した。最大100億ユーロ(約1兆7700億円)の公的資金を投入し、少なくとも200億ユーロ(約3兆5300億円)の民間投資を呼び込むことが期待されている。
これらの施設は、高度なモデルの学習、カスタマイズ、運用に必要な計算リソースを提供することを目的としている。
しかし、AIインフラを欧州内に設置したからといって、海外への依存がすべて解消されるわけではない。欧州のデータセンターは依然として、域外の企業が製造することが多い高度なプロセッサに依存している。現地でホストされているモデルであっても、他地域発祥の学習技術、アーキテクチャ、研究に依存している場合がある。
そして、このことが特定の問題を浮き彫りにする。主権に「完全に欧州で開発されたモデル」が必要であるとすれば、組織は最高レベルの性能を必ずしも発揮しないシステムに対し、より多くの対価を支払うことになりかねない。逆に主権の意味が「インフラ、データ、プロバイダー選択における実質的な統制を維持すること」であるならば、欧州域外で開発されたモデルであっても依然として有用な役割を果たすことができる。


