もちろん、モデル開発費を支払う必要がないからといって、自動的に推論が安くなるわけではない。ハードウェアコスト、稼働率、電気代、最適化、そして十分な利益率(マージン)を確保する必要性が、事業が持続可能かどうかを左右することに変わりはない。
Meliousはこの機を生かすべく、経営体制の強化も図っている。同社によると、スタートアップ投資機関EWORのパートナーであるポール・ミュラーが、創業者のメンターを務めた後、共同CEOとしてMeliousに参画するという。ミュラーはモバイル分析企業Adjustを共同創業し、2022年6月に退任するまでCEOを務めた。Adjustは2021年にAppLovinに約10億ドル(約1580億円)で買収されており、ミュラーは欧州の主要ソフトウェア企業を立ち上げ、売却(エグジット)まで導いた実績を持つことになる。
欧州における基盤モデルとインフラの構築競争
Ecosiaの決断にかかわらず、Mistralや欧州における基盤モデル開発の勢いが衰えているという証拠はない。
Mistral AIは2026年9月に30億ユーロ(約5300億円)を調達し、評価額は210億ユーロ(約3兆7100億円)を超えた。これにより、同社は世界で最も高い評価額を誇る非上場AI企業の1社となり、モデル研究、インフラ、国際展開を拡大するための潤沢な資金を獲得した。
10月にMistralがリリースした約1兆パラメータを持つモデル「Large 4(愛称:Le Chonk)」は、フロンティアモデル市場で競合しようとする同社の野心を示している。同社は10月29日にモデルの重みを一般公開し、自前のインフラ上で高度なAIモデルを運用したい組織の選択肢を広げた。
重みはMistralの「Ecosystem Open-Weight License」に基づいて配布されている。つまり組織はモデルをダウンロードして導入できるが、商用の「Model-as-a-Service」を提供するには別途ライセンスが必要となる。Ecosiaのような企業やMeliousのようなインフラプロバイダーが行っている選択を考慮すると、この区別は重要だ。
Mistralは、より広範な商業ビジネスも構築している。同社の企業顧客にはエアバス、ASML、HSBCなどが含まれ、提供するサービスは各種モデルや「Le Chat」から企業向けツール、計算インフラにまで及ぶ。
これは一方で、Mistralが米中の基盤モデル開発企業だけでなく、自ら開発費用を負担することなくオープンウェイトモデルを提供できる他の欧州企業とも競合していることを意味する。


