金融サービス向けAI企業Avenの共同創業者であるアレクサンドラ・バーチ=メインは南アフリカ出身だ。大学の魅力と家族の英国とのつながりに引かれ、会社を設立する14年前に英国へ移住した。エディンバラ大学で機械翻訳の博士号を取得し、2016年には、単語をより小さな単位に分割し、翻訳ソフトが未知の単語を処理できるようにする手法であるバイトペア・エンコーディングに関する論文を共著した。この手法の派生形は現在、ほとんどの大規模言語モデルで使われている。
バーチ=メインは、自らの背景が意欲の源になっていると語る。「現状に甘んじるつもりはありません。私には後ろ盾となる親戚や資金源がないので、チャンスを自ら掴み取るしかありませんでした。南アフリカの文化では、そうした行動はごく一般的です」。彼女の推計では、ケープタウン大学における1996年のコンピューターサイエンス専攻の同期生のうち、約90%が起業を果たしたという。一方、英国の移民制度に対する評価は手厳しい。「手続き費用が極めて高額で、英国に多大な価値をもたらす優秀な人材にとって、決して親切な制度とは言えません」
研究開発プラットフォームAnkar AIの共同創業者タマー・ゴメスは、インペリアル・カレッジ・ロンドンで博士号を取得するため、フランスから英国へ来た。彼女と、同じくフランス人の共同創業者がどこで会社を築くかを決めた際、パリは当然の選択肢だった。それでもロンドンを選んだのは、エンジニア人材の層の厚さ、投資家へのアクセスの良さ、そして米国市場への接続性に優れていたからだという。書類手続きの負担もフランスと比べて重くはなかった。現在、Ankarの従業員の半数は海外出身者だ。
しかし、チューリヒから移籍した共同創業者は、ビザ取得にあたり第三者機関による推薦と毎年の進捗確認を求められた。「毎年、会社がどれほど成長し続けているかを当局に証明しなければなりません。実際に成長してはいるものの、彼らはVC主導のスタートアップがどう動いているかを全く理解していないのです」とゴメスは語る。「正直なところ、極めて煩雑な手続きです」
ゴメスは現行制度の矛盾をこう指摘する。「当社の場合、一般の熟練労働者を採用するほうが、共同創業者本人がビザを取得するよりもはるかに簡単で早いのです。会社の屋台骨を支える創業者のほうが手続きに苦労するというのは、直感に反しています」


