米国時間10月29日、世界最大の暗号資産取引所バイナンスがハッカーに襲われ、推定64億ドル(約1兆110億円)が盗まれた。デジタル資産の盗難としては、史上最大の被害である。これまでの最大は、2025年2月にライバルの取引所Bybit(バイビット)が受けた15億ドル(約2370億円)の攻撃で、今回の4分の1にも満たない。
日本のDMM Bitcoinからも暗号資産を盗んだ、北朝鮮のTraderTraitor
ブロックチェーン分析企業TRM Labs(TRMラボ)によると、攻撃者は資金の大半を約20分で移した。TRM Labsはこの窃盗を、北朝鮮の精鋭ハッカー部隊TraderTraitor(トレイダートレイター)の犯行とみている。
TraderTraitorは、Bybitを攻撃した実行犯として、米連邦捜査局(FBI)が名指ししたのと同じ部隊だ。2024年5月に日本の暗号資産取引所DMM Bitcoinから約482億円相当の暗号資産を盗んだのもTraderTraitorだと、警察庁とFBIなどが特定している。FBIは10月31日、北朝鮮がバイナンスから60億ドル(約9480億円)を超える暗号資産を盗んだと発表し、今回のサイバー攻撃をTraderTraitorの活動と位置づけた。
暗号資産の窃盗は、北朝鮮にとって主要な収入源になっている。ブロックチェーンデータ企業のChainalysis(チェイナリシス)によると、北朝鮮のハッカーが2025年の1年間だけで盗んだデジタル資産は、推定20億ドル(約3160億円)にのぼる。米当局は、北朝鮮が核兵器や弾道ミサイルを開発する資金の一部を、サイバー犯罪でまかなっていると非難している。
バイナンスは全額補填を約束、盗難資産のうち約4740億円を凍結
バイナンスは出金を一時停止し、損失はすべて自己資金で補うと約束した。10月30日には、被害を受けた利用者に補償するため、63億4000万ドル(約1兆20億円)を超える資金を確保したと明らかにした。また、Tether(テザー)やCircle(サークル)といったステーブルコインの発行会社や、法執行機関と協力し、盗まれた資産のうち約30億ドル(約4740億円)を凍結した。ステーブルコインは、米ドルなどに価値を連動させた暗号資産である。
11月1日には、ビットコインを皮切りに出金を段階的に再開した。被害額のうち補填を終えた割合は、約95%に達したとしている。
事件の報道で暗号資産は24時間に5%下落、ビットコインも5%下げた
事件の報道を受けて、暗号資産の相場は、10月30日までの24時間で全体に5%下落した。ビットコインは5%、イーサリアム(ETH)は7.5%、バイナンスが発行する独自の暗号資産BNBは6.5%、それぞれ値を下げた。
不正流出は2026年上半期に207件、半期で過去最多
暗号資産の盗難は、件数が増えているだけでなく、被害額も膨らんでいる。TRM Labsの集計では、2026年上半期に起きたハッキングは207件で、被害額は10億ドル(約1580億円)近くにのぼった。件数は、半期としてはこれまでで最も多い。
攻撃の中には、異なるブロックチェーン同士をつなぐソフトウェア(ブリッジ)の欠陥を突いたものもある。コンピューターの乗っ取りや認証情報(IDやパスワードなど)の窃取、だまされた従業員に不正な取引を承認させるといった、おなじみの手口に頼った攻撃もある。
2011年以降に盗まれた額、推定で約4兆3600億円に達する
暗号資産データサイトDefiLlamaのデータによると、2011年以降、ハッカーに盗まれたり、プログラムの欠陥を突いて引き出されたりした暗号資産は、推定276億ドル(約4兆3600億円)相当にのぼる。以下に挙げる最大級の10件だけで、120億ドル(約1兆8960億円)近くを占める。



