社会問題化する過剰観光の実態
米国では毎年年末になると、メディア各社が「翌年に訪れるべき旅行先」を紹介するのが恒例となっている。米科学誌ナショナル・ジオグラフィックが最近発表した「2027年に訪れるべき世界最高の場所」もその一例だ。特定の地域に焦点を当てたものもあれば、国全体を取り上げたものもある。いずれにせよ、こうした記事は多くの人にとってなじみの薄い場所の魅力を宣伝する形となり、結果として、その目的地を訪れる旅行者が増えることにつながる。
地元住民による観光客への抗議活動や気候変動、そして尽きることのない旅行への欲望が相まって、過剰観光は特に昨年以降、大きな社会問題として取り上げられるようになった。過剰観光とは、あまりにも多くの人々(その多くは外国人)が同時に特定の目的地に殺到することで、地元住民が手頃な価格の住宅のほか、史跡や公園、ビーチ、自然といった資源を利用しにくくなる状況を指す用語だ。
しかし、問題は単に旅行したい人が多過ぎるということだけではない。多くの人が同じ時期に同じ場所へ旅行しようとすること、それも多くの場合、1年で最も暑く、最も混雑する時期に集中することが問題なのだ。危機管理ソフトウェアを手がける仏アンテルセックが発表した最新の統計は、欧州の特定の地域の人口が、夏の間にいかに急増するかを浮き彫りにしている。
● エーゲ海南東部に点在するギリシャのドデカネス諸島では、夏になると人口がほぼ2倍になり、繁忙期には1日当たり最大20万人の旅行者が訪れる。
● イタリア北東部ベネチアでは、8月になると1日に約24万5000人もの旅行者が押し寄せ、5人に1人以上が観光客という割合になる。
● クロアチア北西部のイストリア半島では、8月になると旅行者の数が地元住民を上回り、人口わずか20万1000人の同地域で、27万人近くの観光客がホテルや短期賃貸物件を埋め尽くす。
こうした背景を踏まえると、先述の世論調査が示すように、旅行者が過剰観光について深く考え始めているのは驚くべきことではない。


