米国の対中半導体輸出規制は、ファーウェイなど中国企業に商機を与えた
中国のAI半導体市場では、2024年の時点でもエヌビディアが60%超のシェアを握っていた。問題は、ジョー・バイデン政権で米商務長官を務めたジーナ・レモンドが、「貿易は戦争だ」という誤った考えにとらわれていたことだ。レモンドは、中国に「AIや高性能コンピューターの飛躍的な進歩につながり得る先端半導体へのアクセス」を与えてはならないと述べた。
レモンドやその後の米国の政治家は、自らの発言が中国共産党(CCP)を安心させるとは理解していなかった。中国の先進的なAI開発者は、明らかにエヌビディア製のAI半導体を好んでいた。ところが中国共産党は、「何でも国内で製造すべきだ」という考え方を受け入れていた。同じ考えは、米国でも少なくとも政治家の間で広まりつつあった。エヌビディア、AMD、インテルなどに無思慮に課された輸出規制は、ファーウェイなど中国の技術大手に商機を与えた。中国企業は、以前は米国メーカーがAI半導体を供給していた中国国内や海外の市場で、販売機会を得た。
では、エヌビディアのような米国企業には何が起きたのか。エヌビディアの中国AI半導体市場でのシェアは急落した。調査会社IDCの出荷台数に基づく集計では、2025年の55%から2026年上半期の34%に低下している。2026年上半期の出荷台数も前年同期比44%減の67万8000個だった。
米中のAI開発者を分断し、技術進歩と報酬の伸びを妨げる保護主義
米中のAI開発で協力が妨げられている現状は、フォードが語った「知らないことがあっても構わない」という考え方を思い起こさせる。フォードの工場では、従業員が最も得意な仕事を担当できたため、知識が及ばない分野があっても問題にならなかった。フォードは「大量生産の手法は、労働者がより多く稼ぎ、より多くのものを手にできるようにする」と述べている。保護主義が再び醜い姿を現すまでは、米国と中国のAI開発でも、得意分野を分担して成果を高める関係が成り立っていた。
AI開発の現場では、米国と中国の開発者が単純に敵対していたわけではない。両国の優れた技術者の能力が互いにかみ合えば、目覚ましい技術の飛躍が生まれ、進歩が速まり、報酬も増えるはずだった。ワシントンと北京の政治家が邪魔をしなければ、米中の技術者による協力は2026年10月の時点でも続いていただろう。
相手国から商品を買わなければ、自国の製品も売れず、富と平和が損なわれる
ところが、貿易に参加できることは幸運なはずなのに、貿易によって参加者が弱くなるという途方もなく愚かな考え方が支配している。中国の優れたAI開発者は、米国から切り離されて働くことを、ますます求められるようになる。米国のAI開発者も中国との協力から切り離される。政治も経済も最悪の状態だ。米中の政治家は、相手国の生産者が自国市場で売れなければ、自国の生産者も相手国市場で売れないという単純な真実を、まるで理解していない。
繰り返すが、輸出は平和をもたらし、輸入は豊かさをもたらす。2026年10月の北京とワシントンの指導部が、富と平和の両方を損なう道を選んでいるのは、なんとも悲しい。


