働き方

2026.10.31 07:11

社員はすでにAIで速くなっている。だが組織はどうか

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ギャラップの調査によれば、米国で就業する成人の半数が、現在年に少なくとも数回は職場でAIを使用しており、3年前から急増している。しかし、AIを導入している組織の従業員のうち、仕事の進め方が変わったと強く感じているのは約10人に1人にすぎない。私が見てきたなかで最大の課題は、AIが個人にもたらしている生産性向上を、より広範で測定可能なビジネスインパクトへとつなげることだ。

ツールは浸透している。しかし変革は起きていない。

現在、ITやビジネスのリーダーとの対話の中で、ほぼ毎回次のような話を聞く。従業員は好意的で、個人レベルの生産性向上エピソードは枚挙に暇がない。しかし、AIの利用が進んでいるというデータがあるにもかかわらず、経営陣は企業全体の成果としてそれを提示できずにいる。このギャップの原因はテクノロジーではなく、カルチャー(組織文化)にある。意思決定のやり方、会議の頻度、日常的に踏襲しているプロセスが変わらなければ、いくらAIを重ね合わせても、その価値は従来の慣習の中に埋もれたままだ。実際に成果を享受できるのは、違和感や不確実性を受け入れる覚悟のある組織だ。よりアジャイルで、より実験的であり、リスクを取ってリアルタイムに学び、調整することを恐れない組織である。

個人の生産性から、測定可能なビジネスインパクトを生み出す全社的プロセス変革へと移行すべき時だ。

「タスクの実行」から「判断の所有」へ

与えられた特定のタスクを実行する「AIアシスタント」の段階から、規定の条件下でより複雑で複数ステップに及ぶタスクを自律的に実行する「AIエージェント」の世界へと移行しつつある。しかし、適切な判断を下し、必要な決定を行うためには、人間が関与し続けること(Humans-in-the-loop)が依然として極めて重要だ。

AIエージェントが企業システム全体でより多くの調整を担うようになるなかで、問うべきはAIに何ができるかではなく、プライバシーとコスト効率を確保するために、AIをどこで動かすべきか、つまりクラウド上なのかデバイス上なのかであると私は考える。また、個人の特定タスクがどれだけ速くなるかではなく、ある機能のワークフロー全体がどのように変革されるかを問うべきだ。そして、AIが人を置き換えるかどうかではなく、AIとともに役割やプロセスがどう変わるかを問うべきである。

オンボーディングはよい試金石であり、単なるチェックリスト以上のものとして扱われるべきだ。給与登録、機器の手配、建物への入館権限、研修スケジュールを処理するために、他のエージェントと静かに連携するオンボーディングエージェントを想像してほしい。そのエージェントはバックグラウンドで動き、進捗に応じて人事に情報を更新する。新入社員のノートPCが机に置かれ、社員証でドアが開く頃には、そこにフォームが存在したことさえ誰も覚えていない。

これが上手く機能すれば、単に時間を節約できるだけではない。人事担当者や直属の上司がその時間を別の重要な活動に充てられるようになる。新入社員を温かく迎え入れ、メンターを引き合わせ、一緒にオフィスを案内し、申請フォームにはない疑問に答えるといった対応だ。そうした帰属意識を育むのはエージェントではない。人間である。そしてエージェントは、人間がそれを丁寧に行うための時間を作り出してくれるのだ。

真の変革は個人のレベルではなく、組織のレベルで起きる

マイクロソフトの「Work Trend Index 2026」によると、既存の働き方に単にテクノロジーを重ね合わせるのではなく、AIを中心にワークフローを日常的に再設計している「フロンティア・プロフェッショナル」は、調査対象となったAIユーザーのわずか16%にとどまっている。

組織が起こすべき変革は、単に「従業員がルーティンワークを減らす」ことではない。人間とAIエージェントがそれぞれ最も得意とする分野を中心に、ワークフローを全面的に再設計することだ。既存のプロセスにAIを付け足すのではなく、リーダーはエージェントが処理できる領域、人間が判断すべき領域、そして人間の監視が不可欠な領域を見極める必要がある。まずは反復作業や調整作業によって停滞しているワークフローから着手し、エージェントが担当する範囲、人間が関与するタイミング、両者の協働方法、そして成功測定の指標を明確に設計していくべきだ。

リーダーは、AIがどこで価値のあるビジネスインパクトを生み出せるか、どの部門やワークフローが変革可能な状態にあるか、そしてトークン費用などを考慮した上で投資対効果(ROI)をどう測定するかを判断しなければならない。また、こうしたワークフローが単一の部署内で完結することは稀であるため、変革はIT部門だけで完結するものではない。事業部門、IT部門、人事部門などの多様な機能が、共通の成果に向かって連携することが求められる。

採用が障壁でないとしたら、何が障害になっているのだろうか。リーダーに必要なのは、相互に連携するシステム、信頼できるほどクリーンなデータ、そしてAIが単独で行動できる領域と人の承認が必要な領域を分ける明確なルールだ。それは、仕事の進め方を再構想することで最大のビジネスインパクトを生み出せるワークフローを特定し、そのインパクトをどう測定するかを定義することから始まる。

リーダーが次に取るべきアクション

自律型AI(エージェンティックAI)の影響力は極めて大きいものになるだろう。最も大きな価値を得る組織とは、最も多くのエージェントを運用している組織ではない。手作業や調整作業がどこで業務のスピードを落としているのかを厳しく見極め、それらのワークフローを意図的に再設計し、テクノロジーでは代替できない「判断」「人間関係」「意思決定」に人間を集中させることができる組織だ。

そのためには、役割の変化について誠実にコミュニケーションを取り、必要に迫られる前にリスキリングへの投資を行い、単なるツールだけでなく、自らの会議、承認ライン、報告構造そのものに疑問を投げかけることができるリーダーが必要となる。

また、仕事の進め方を再考するために、事業部門、IT、人事、その他の機能を結びつける、構造化された組織横断的なアプローチも必要である。

さらに、テクノロジーの進化に合わせて従業員が試行錯誤し、学び、適応することを容認するカルチャーを醸成することを意味する。最終的に、AIの最大の効果は個人の業務スピードの向上ではなく、組織が一致団結していかに力強く可能性を再定義できるかによって測定されることになる。

(forbes.com 原文)

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