CEOs

2026.11.05 13:30

純利益10倍でも手綱を緩めない 住友金属鉱山 松本社長が徹底する一害を除く経営哲学

松本伸弘|住友金属鉱山 代表取締役社長

BRANDVOICE | Paid Program

もっと見る>

「リサイクルは分別や前処理もありコストが高い。でも、欧州を先頭に電池のリサイクル率を法律で義務づける動きが世界に広がれば、リサイクル原料でなければ使えなくなる。プレミアムを付けて売れるようになり、事業として成り立つ」

advertisement

規制が広がる前に、技術を確立しておく。将来のリスクを、先に消しておくのだ。

その発想の原点は、約20年前のフィリピンにある。技術者として研究開発と生産の現場を歩いてきた松本が、世界で初めて商業化する低品位ニッケル酸化鉱の製錬工場を立ち上げたときのことだ。年産1万トンの計画に対し、初年度は6割しか動かなかった。

「自分の思い込みだけで改善しようとしても限界があった。従業員と議論し、まったく違う発想で設備を改造したら動き出し、翌年は計画を超えました」

advertisement

座右の銘「一利を興すは一害を除くに如かず」は、ニッケル工場時代の上司の教えだ。「いいことだけを見ていたら弊害が絶対にある。すべてをリスクとしてとらえよ」。機会損失を消す稼働率の回復も、上流から下流までをつないで無駄を出さない3事業の連携も、規制を先取りするリサイクルも、利を足す前に害を除くという一点でつながっている。

準備は今、2030年に向かう。次の中期経営計画2030の議論が、すでに始まっている。ウィヌの次の案件も探鉱を進めており、どれを選び、どこと組むかを見極めていく。

その準備に、外の目も取り込む。近年はキャリア採用を増やし、住友に染まっていない視点を組織に入れている。「外から見れば『もっとこうしたほうがいい』という視点が絶対にあるはずです」

根底にあるのは、住友の事業精神「自利利他公私一如」と、源流の銅事業を「維持するだけではなく、成長させる」使命感だ。430年超の伝統を背負う技術者は、割り切りと準備を武器に、2030年、さらにその先の姿を描き始めている。


まつもと・のぶひろ◎1963年生まれ、福岡県出身。九州工業大学大学院金属工学専攻修士課程修了後、87年住友金属鉱山入社。2008年ニッケル工場長、18年金属事業本部長。19年取締役、20年常務執行役員、22年専務執行役員。24年6月より現職。

文=坂元耕二 写真=榊 美麗

タグ:

連載

10年後のリーダーたちへ

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事