――AIへの期待が高まる中、顧客からの要望も高度になっているのでは?
谷口:おっしゃる通りで、これはスタートアップが陥りやすいジレンマだと思っています。ビジネスには、技術的に実現できるかと、顧客が求める価格帯に収まるかという2つの問いがあります。PoC(概念実証)ばかりで価格を気にせず技術を追いかけると、一度試して終わりになってしまう。
価格面で実現できなければ、「できたけど買えない」となり、顧客に無駄な時間を過ごさせてしまいます。そこで、顧客の店舗内に我々の開発環境をつくり、プロトタイプを見せて「この値段なら買いますか?」と早い段階で確かめるようにしています。だからあまり外さないのかもしれません。
――2024年以降、4社を子会社化し、さらに施工会社の通信の買収も発表しています。これまでの買収は業績にどの程度寄与しているのでしょうか。また、今後の成長にどうつなげていきますか?
谷口:2024年以降、M&Aには総額約「38」億円を投じてきました。特に本年は、3件のM&Aを公表しており、連結従業員数を合計すると約450名と期初対比で2倍を超える見込みです。3社は、それぞれ異なる業態の企業であり、規模の拡大はもちろんの事、グループとしての機能強化を図れるものと考えております。
日本の監視カメラ市場は今後も拡大が見込まれています。成長を加速させるには、自社のリソースだけでは限界があります。面を取りに行く水平の拡大と、ハードからソフト、施工まで一気通貫で担う垂直の統合が必要です。その構想を加速させる手段がM&Aです。
無人決済のTOUCH TO GOは、人手不足で店が回らないという課題と、人手が足りずに万引きが増えるという課題の両方に応えます。商品を取ってレジへ向かう動きと、商品をポケットに入れる動きは、技術的には近いんです。テスコムジャパンは、AIに適したカメラなどハードウェアの開発・製造を担っています。カメラ側で必要な画像だけを選んで送れば、AIの処理コストは圧倒的に下がる。通信などの施工会社をグループに迎えるのは、脚立に上る設置工事のように、ロボットには置き換えにくい職人の力を確保するためです。
M&Aに加え、資本業務提携による販路拡大も進めています。26年3月に提携を発表したリコージャパンとは、2030年度に協業による年間売上高100億円を目指しています。同社の幅広い顧客基盤を活用して販売力を高めていく考えです。業績に本格的なインパクトが出るのは27年以降だと見ています。


