カスピ海を隔てた西側にはアゼルバイジャンが控えている。同国は既にジョージアとトルコを経由する複数のパイプラインを敷設しており、1本はトルコへ原油を、もう1本は欧州へ天然ガスを輸送している。前者の石油パイプラインの輸送能力は日量120万バレルだが、ウッド・マッケンジーによると、実際の稼働率は能力を大幅に下回っている。カザフスタンとトルクメニスタンに欠けているのは、こうした既存のパイプラインに接続する手段だ。
両パイプラインとも、アゼルバイジャンの首都バクー近郊のカスピ海沿岸が始点となっている。カザフスタンとトルクメニスタンはカスピ海の東岸に位置しているが、同海を横断し、西岸のアゼルバイジャンに至るパイプラインは存在しない。現在、タンカーで輸送されているカザフスタン産原油はごくわずかで、液化設備のない同地域では、天然ガスを船舶で輸送することができない。必要なのは、トルクメニスタンからアゼルバイジャンまでの天然ガス輸送用の全長約300キロの海底パイプラインと、カザフスタンからの原油輸送路だ。バクーを経由すれば、中央アジア産の石油や天然ガスはロシアやホルムズ海峡を通ることなく、トルコや欧州に出荷することができる。
この海底経路は、再生可能エネルギーの輸送にも利用できる。アゼルバイジャン、カザフスタン、ウズベキスタンは、中央アジアの再生可能エネルギーを欧州に送るための海底ケーブルの敷設を検討しており、独エネルギー関連機器メーカーのシーメンス・エナジーは今月、この計画への参画を表明した。
最大の変化は、パイプライン建設には長らく消極的だったトルクメニスタンの動きだ。同国国営天然ガス企業トルクメンガスのミラト・アルチャエフ副会長は今月、中央アジア情勢を専門とする米ニュースサイト「ユーラシアネット」の取材に対し、政府は現在パイプライン建設を優先事項としており、西側からの投資を歓迎していると述べた。トルクメニスタンとアゼルバイジャンの両大統領は8日に会談し、カスピ海問題について協議した。
既に中国という輸出先がありながら、トルクメニスタンはなぜカスピ海の海底パイプライン建設に関心を示しているのだろうか? なぜなら、中国はトルクメニスタンが販売可能な天然ガスのほんの一部しか購入していないからだ。ウッド・マッケンジーによると、トルクメニスタン産天然ガスの中国の年間輸入量は約340億立方メートルで、拡大に向けた交渉はほとんど進展していない。輸出先が1カ国に限られている場合、価格交渉の主導権も買い手側に握られることになる。天然ガスはトルクメニスタンの国内総生産(GDP)の約3分の1を占めるため、第2の輸出先の存在は重要だ。とはいえ、カザフスタンが石油の大部分をロシア経由で輸出し続けるのと同様に、トルクメニスタンも中国への輸出を続けるだろう。


