未成年者への金銭目的の性的脅迫、数時間で命を落とす被害と通報増加
2021年10月から2023年3月までに、FBIと米国土安全保障省の捜査部門は、未成年者を狙った金銭目的のオンライン性的脅迫について1万3000件を超える通報を受けた。確認された被害者は少なくとも1万2600人に上り、通報された事案は少なくとも20件の自殺と関連していた。
FBIによれば、被害者の多くは14~17歳の男子で、加害者は米国外、特に西アフリカや東南アジアの国々にいることが多い。加害者はギフトカード、モバイル決済アプリ、銀行送金、暗号資産などを使って金銭を受け取る。
デメイは最初のメッセージから5時間以内に亡くなった。イライジャの家族も、脅迫を受けてから1時間以内に自殺を図ったと説明している。
全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)は、児童の行方不明や性的搾取に関する通報を扱う米国の非営利団体だ。NCMECには2025年、オンラインで子どもを性的な目的で誘うなどの行為について140万件を超える通報が寄せられた。2024年比で158%の増加で、性的脅迫も含む区分だ。2025年上半期だけでも、金銭目的の性的脅迫に関する通報は2万3500件を超えた。
加害者は生成AIで偽の性的画像と被害者を誘い込む文章を量産できる
従来の性的脅迫では、加害者が長時間チャットを続けて相手の信頼を得る必要があった。生成AIを使えば、長時間のやり取りを減らし、性的な偽画像や被害者に接近するための文章を大量に作れる。NCMECが受けた生成AI関連の児童性的搾取についての通報は、2023年から2024年に1325%増加した。
偽画像は脅迫の材料となる。SNSでプロフィールを一般公開している10代の若者に、本人の性的画像に見える偽物、制限時間、SNSから集めた友人や家族の一覧を突きつける手口がある。FBIが聞き取りをした被害者の中には、8歳の子どももいる。
米国は性的画像の無断公開や脅迫を処罰、対象サービスに48時間以内の削除義務
米国では2025年5月19日、大統領が連邦法「TAKE IT DOWN法」に署名した。実際に撮影された画像か、AIで捏造された画像かを問わず、本人の同意なく性的な画像を公開したり、公開すると脅したりする行為を、一定の条件の下で犯罪として処罰する。
TAKE IT DOWN法は対象となるオンラインサービスに、有効な削除要請を受けてから48時間以内に画像を削除するよう義務付けている。違反した場合、1件当たり最大5万3088ドル(約839万円)の民事制裁金が科され得る。
ケンタッキー州でも2025年3月、ヒーコックの家族が成立を後押しした州上院法案73号が成立した。ケンタッキー州の法律は性的脅迫を原則として軽罪とし、被害者が金銭を支払った場合など一定の条件に当てはまれば重罪として扱う。
海外の加害者を米国はどう突き止め、摘発しているのか
法律は検察官に訴追の根拠を与え、技術は捜査官の対応を速める。FBIは、画像や動画がAIで作られたかどうかを調べ、出所を追跡するための技術を持つ。
FBIは2025年4月、カナダ、オーストラリア、ナイジェリア、英国の協力機関と実施した、初の試みとなる国際捜査「オペレーション・アルテミス」の成果を公表した。金銭目的の性的脅迫に関わった疑いで、ナイジェリア人22人が逮捕された。
FBIの捜査官、情報分析官、鑑識専門家がナイジェリアに入り、犯罪組織の構成員を特定して拘束した。2026年8月26日には、ナイジェリアの経済金融犯罪委員会が、別の容疑者2人を米国へ引き渡す手続きを支援した。2人は米国で訴追を受けることになった。


