決定的な転換点となったのはコロナ禍
そもそも座り心地を追求した「ゲーミングチェア」はいつ頃から現れたのか。その起源は、レーシングカー用シート(バケットシート)の製造にさかのぼる。
「DXRacer(デラックスレーサー)」は、中国江蘇省でレーシングシートを手がけていた企業を前身としていて、同社によれば2006年に世界初のゲーミングチェア「Formula」シリーズを発売した。高級スポーツカー用シートの技術を応用した設計で、2013年には米国市場にも進出、ミシガン州に米国本部を置いている。
また、同じく中国江蘇省で主に車のシートを製造していた「揚州奥凱カー用品有限公司」は、2005年に自社ブランド「AKRacing (エーケーレーシング)」を立ち上げ、国際的なeスポーツ大会で使用されるチェアを供給するなど、ゲーミングチェアというジャンルが市場で確立する以前から高品質な製品を提供していた。日本市場には2015年に参入し、eスポーツ大会などでの採用を通じて認知を広げた。
決定的な転換点となったのが、2020年以降のコロナ禍だった。外出制限やテレワーク推奨により「家で長時間座る」ことが急増し、通常のオフィスチェアよりも腰への負担が少ないゲーミングチェアが、ゲームをしない層にも支持された。
この波に乗り、PC周辺機器メーカーや家具メーカー、ゲーミング専業ブランドなどもゲーミングチェア市場に参入した。
前述の「あーる」さんは週4日在宅、週1日出社という勤務形態で、ブログ執筆も行うため、1日に10数時間イスに座って作業するという。彼はBouliesのデザインについてもこう話す。
「ゲーミングチェアの起源は、『AKRacing(エーケーレーシング)』や『GTRACING(ジーティーレーシング)』といったブランドに代表されるように、自動車のレース用シートを製造していた中国企業が、その高いホールド性を実現する技術をゲーム用途に応用したことにさかのぼります。
ゲーミングチェアに見られる派手なストライプやデザインは、このレーシングシートからの派生であるという名残が色濃く反映されているのです。
ただし近年では、こうした派手なデザインとは一線を画し、オフィスや自宅のインテリアに『溶け込むような落ち着いたデザイン』を志向するブランドが登場しています。
Bouliesがそれで、『イギリスのデザイン思想』といったコンセプトを掲げており、その背景にはヨーロッパに拠点を置くことでブランドの信頼性を高める狙いもあります」


