ブルームーンと「ストレッチ・セントール」
ブルーオリジン社のブルームーンの場合は、スターシップと異なり、軌道上での燃料補給を必要としない。その代わりに、3機のトランスファーステージ(移送機)を個別に打ち上げ、それらをブルームーンに地球低軌道上でドッキングさせる。
また、スターシップがオリオン宇宙船と地球周回軌道上でドッキングするのとは異なり、ブルームーンは月周回軌道上でドッキングする。つまり現地集合だ。こうした工程でトランスファーステージは、ブルームーンが月周回軌道に入るためのブレーキ(逆噴射)をかけ、さらにその軌道高度を下げる役目を担い、ブルームーンが月面に降下する際には分離されて投棄される。
その後、オリオンからブルームーンにトランジットしたクルー2名が月面に降りる。月面での探査が完了すると、月周回軌道まで上昇したブルームーンはオリオンとドッキングし、ブルームーンはそのまま投棄。クルーが乗ったオリオンだけが地球に帰還する。
じつは半年前まで、こうしたシーケンスを採用することは困難と思われていた。それは主にSLSロケットの第2段に予定されていたEUS(Exploration Upper Stage)の開発遅延と、開発予算の肥大化が原因とされる。アルテミス1・2で使用された第2段、ICPS(Interim Cryogenic Propulsion Stage)は、低出力で投入可能な月の高軌道にオリオンを導くことはできるが、より大きな推力(逆噴射)が要求される月の低軌道に投入することが難しい。
そのため、有人月面着陸の本番ミッションではハイパワーなEUSに換装されるはずだったが、その開発遅延によってミッション自体のさらなる遅れが予想された。バイデン政権下において有人月面着陸ミッションは、当初目標の2024年から2027年以降へと幾度も延期されたという経緯がある。


