宇宙

2026.10.30 12:30

NASAが公開した「2028年有人月面探査」の新シーケンス、マスクとベゾスが挑む超タイトな工程表

NASA

BRANDVOICE | Paid Program

もっと見る>

オリオン宇宙船はその間に、ブルームーンとのドッキングを解除し、飛行8日目にはスターシップとのランデブー軌道、つまり高度約380kmの円軌道へとさらに高度を下げる。アルテミス3で使用されるスターシップには、機首のノーズコーンにドッキングシステムが組み込まれており、オリオンはそこに接続する。

advertisement

スターシップは巨大であり、オリオンとの質量差が大きい。そのためNASAは、この2機がドッキングした状態での姿勢制御を主に検証する。ただし、このデモは約2時間と短く、その間にクルーがスターシップHLSに乗り込むことはない。このテストによって得られるデータは、両機を運用するにあたって基礎的かつ最重要なものとなる。

このデモが完了すると両機はドッキングを解除するが、オリオンとそのクルーはさらに数日間を軌道上で過ごし、追加のテストを帰還まで継続する。

実際に月へ赴くスターシップHLSは、地球への帰還が予定されておらず(クルーはオリオンで帰還する)、機体外壁に大気圏再突入用の耐熱パネルが施されていないため、月周回軌道で廃棄される。しかし、アルテミス3で使用されるスターシップがどのような形態になるかは未定だ。もし同ミッションで、耐熱パネルや操舵フィンを持つ標準仕様機が使用されれば、ブースターと同様、ケネディ宇宙センターの新設タワーにキャッチされる可能性もあるだろう。

advertisement

月への旅程:スターシップ

NASAは今回のプレスイベントで、アルテミス4・5のシーケンスも発表した。つまり、これらが有人月面着陸の本番となる。スターシップとブルームーンのどちらの機体が先に飛ぶかはまだ公表されていないが、両ミッションとも、現時点では2028年中が予定されている。

スターシップHLSによる月面探査ミッションの行程図 (C)NASA
スターシップHLSによる月面探査ミッションの行程図 (C)NASA

スターシップの最大の特徴は、地球周回軌道上で派生機から推進剤補給を受ける点にある。月へ赴く超大型機スターシップHLSは、打ち上げ後、地球低軌道(LEO)に到達した時点で推進剤タンクがほぼ空になる。そのため、月面にクルーを送迎するには推進剤補給が必要になる。

スペースXはまず、「デポ(Depot:保管所)」と呼ばれるスターシップの派生機をLEOに打ち上げる。続いてタンカーと呼ばれる派生機を複数機打ち上げ、その補給によってデポのタンクを満たしていく。こうして2機のデポのタンクが満タン状態になったら、それを月に赴くスターシップHLSに移す。満タンになったスターシップHLSは、地球を周回する高軌道(HEO)でオリオン宇宙船とドッキングし、両機はスターシップHLSの推力によって月への軌道(TLI)に入った後、同エンジンを逆噴射させることで速度を落とし、月周回軌道に入る。

オリオンからクルー2名がスターシップにトランジットして月面に降りる。月面探査が完了し、月面から上昇したスターシップHLSは、再びオリオンとドッキングして、クルーはオリオンで地球へ帰還し、スターシップHLSはそのまま月周回軌道上に投棄される。

スペースXの月着陸機スターシップHLSと、推進剤補給船デポによる軌道上補給のイメージ (C)NASA
スペースXの月着陸機スターシップHLSと、推進剤補給船デポによる軌道上補給のイメージ (C)NASA

このプレスイベントの直前、タンカーによる補給回数に関して、NASAは最大22回が必要との推定値を公表した。これに対してマスク氏は、「それは多すぎる、実際には6~8回程度だろう」と指摘した。ただし、軌道上での推進剤移送は実証例の少ない技術であり、極低温の推進剤がどの程度ボイルオフ(蒸発)するのか、スターシップの積載能力が最終的に何トンになるのか、どの程度の積載マージンをとるのかなど、不確定要素が多く、実証テストを行わなければ信用に足る数値は得られないと思われる。

次ページ > ブルームーンと「ストレッチ・セントール」

編集=安井克至

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事