筆者は最近、今日のウェルスマネジメント業界における人工知能(AI)の活用状況について、心強い2つのデータを目にした。
1つ目の調査結果は、それほど意外なものではなかった。最近の調査によると、ファイナンシャル・アドバイザーの70%がすでに人工知能を利用している。これは理にかなっている。2022年後半に生成AIの利用が爆発的に広まって以来、AIはウェルスマネジメントを含む多くの分野で生産性を向上させてきたからだ。ただし、アドバイザーや顧客の業務をより効率的、あるいは有意義なものにするうえで、AIがすべての役割を果たせるわけではない。筆者は、そうあるべきでもないと考えている。
アディション・ウェルス(Addition Wealth)が8月に実施した調査は、この点を裏づけている。回答者の4分の3近く(72%)が、金融上の助言を受ける際には人間が主導するか関与することを望むと答え、AIのみからのアドバイスを好む人はわずか5%だった。
アドバイザーと顧客の意見は一致している。テクノロジーを活用して定型的な雑務の時間を削減し、より一人ひとりに寄り添った資産運用の助言やケアに集中したいと考えているのだ。これはウェルスプランニングの未来にとって素晴らしいニュースである。では、アドバイザーが今後進むべき最善の道とは何だろうか。
まず、AIの限界を考える
AIを嘘発見器のようなものと考えてほしい。その結果を正しく解釈するには人間の存在が不可欠だ。ファイナンシャル・アドバイスにおいて、失業への不安、家族の介護、長期的な医療費の管理といった顧客が真に懸念していることを理解する場面において、AIは対面での対話に代わるものにはなれない。
簡潔に言えば、AIは課題を特定するのは得意だが、ファイナンシャル・アドバイスに不可欠な問題の深掘りは苦手だ。優れたアドバイザーは問題をただ発見するだけでなく、その根本原因を掘り下げる。AIにはでたらめを見抜くセンサーもなければ、顧客の懸念を深く掘り下げたり、人間のアドバイザーのように悪習慣を修正し、望ましい行動を促したりする力もない。
厳しい現実を伝え、強固な信頼関係を築くためには、人間のアドバイザーこそが不可欠な要素だと筆者は強く確信している。だからこそ、分析や生産性の面ではAIのサポートを歓迎しつつ、アドバイザー業務の基盤であるパーソナルな対応に集中すべきなのだ。
次に、ロボアドバイザーを恐れない
手軽に利用できることから、ロボアドバイザーを利用する人が増えている。世界市場は2026年の141億ドル(約2兆2300億円)から、2030年には410億ドル(約6兆4800億円)以上に拡大する見込みだ。
この動向に不安を感じるだろうか。そうである必要はない。
ロボアドバイザーは、より多くの人が投資を始めるための有用な手段ではあるものの、ファイナンシャル・プランニングに価値をもたらすパーソナルなケアや個別のカスタマイズは提供できない。AIと同様に、ロボアドバイザーは人間のアドバイザーと補完し合いながら、市場の拡大と効率化に貢献することになるだろう。
大半の飛行機は自動操縦で支障なく飛行できるが、トラブルが発生した際のためにコックピットにはパイロットが必要だ。機械が正常に作動していないことに気付くには人間が必要とされる。したがって、ロボットの台頭が顧客を奪っていくように見えても、人間が発揮する情動的知性にロボットが立ち向かえることは決してない。
最後に、自らの「AIとの未来」を主導する
多くのアドバイザーは、メモ作成やコミュニケーションのためにAIを利用することには抵抗がないものの、ポートフォリオ構築のような重要業務に利用することには慎重だ。AIは分析には優れているが、ファイナンシャル・プランニングにおける感情面や個人に寄り添う領域を扱うことはできない。
ウェルス・アドバイザーがAIツールに慣れ親しみ、スキルを向上させるための実践的な方法を以下に挙げる。
まず、汎用的なAIツールの活用から始めよう。まだ利用していない場合は、Copilot(コパイロット)やJumpAIのようなメモ作成・分析ツールを試すとよい。これらは会話の有益な要約を提供し、重要な詳細や次のステップの見落としを防いでくれる。また、定型業務を効率化し、顧客に関して収集した過去情報のデータベース構築をサポートすることで、より包括的なサービスの提供を可能にする。
次に、自身の専門分野に合わせたツールセットを構築する。たとえば、分析プログラムは確定申告書や資産継承計画における課題の特定に役立ち、包括的なプランニング提案の幅を広げてくれる。自社でこれらのサービスを直接提供していない場合は、顧客のニーズに対応できる信頼できる提携先を見つけて紹介する絶好の機会となる。必要に応じて外部の専門家を巻き込みつつ、何をいつ行うべきか、テクノロジーを活用して顧客に全体像を把握させよう。「Holistiplan」は、ファイナンシャル・アドバイザー向けに確定申告書の分析やシナリオモデリングを自動化するために開発された優れたAIツールだ。(開示事項:ペンスのチームはCopilot、JumpAI、Holistiplanを使用している。マイクロソフトへの出資を行っているが、JumpAIおよびHolistiplanとの間にその他の提携関係はない)
最後に、AIの可能性に対して常に好奇心を持ち続けることだ。ウェルスマネジメント業界におけるAI活用はまだ初期段階であり、アドバイザーと顧客の双方にとって、今後さらに大きな機会がもたらされる可能性が高い。常にテクノロジーを自分自身の敵ではなく味方として活用し、未知のものを恐れず、自社の最大の資産である「人間の温かみ」、すなわちアドバイザーその人に一層の光を当てるためにAIを役立ててほしい。
本記事で提供される情報は、投資、税務、金融に関する助言ではない。個別の状況については、資格を有する専門家に相談してほしい。本コンテンツは、ペンス・キャピタル・マネジメントによる個別助言として受け取られるべきではない。



