アマゾンはAWSの増益を上回る速さで現金が流出
アマゾンのクラウド事業「AWS」は、企業がAIを支える計算基盤に多額の対価を支払っていることを示す有力な例だ。
顧客からの売上高は伸び、クラウド事業の利益も増えた
7月30日に発表した2026年4~6月期決算では、AWSの売上高が前年同期比37%増の422億ドル(約6兆6660億円)となり、増収率は過去18四半期で最高だった。AWSの営業利益は前年同期の102億ドル(約1兆6112億円)から166億ドル(約2兆6222億円)に増えた。
10月29日に発表した2026年7~9月期決算では、AWSの売上高は前年同期比約39%増の460億ドル(約7兆2663億円)、営業利益は178億ドル(約2兆8117億円)に達した。顧客からの売上高と営業利益がともに伸びており、クラウド基盤への需要は極めて強い。AWSは、企業による関連支出の相当な部分を獲得している。
直近12カ月のフリーキャッシュフローは約6兆7000億円の赤字
アマゾン全体では、事業から入ってくる現金以上の速さで設備投資の資金が出ていく。2026年6月末までの直近12カ月のフリーキャッシュフローは76億ドルのマイナス(約1兆2005億円の赤字)で、前年同期の182億ドル(約2兆8749億円)の黒字から転じた。主因は、有形固定資産の純購入額が前年同期比661億ドル(約10兆4413億円)増えたことだった。
2026年9月末までの直近12カ月では、営業キャッシュフローが前年同期比29%増の1683億ドル(約26兆5851億円)に伸びた。それでもフリーキャッシュフローの赤字は424億ドル(約6兆6976億円)に拡大した。有形固定資産の純購入額は前年同期から948億ドル(約14兆9749億円)増加しており、アマゾンは主にAI投資を反映したものと説明している。事業から稼ぐ現金も増えているが、設備投資はさらに速く膨らんでいる。
アンソロピックへの出資で生じた利益は本業の稼ぎとは別
純利益にはクラウド事業とは異なる要因もある。2026年4~6月期の純利益は626億ドル(約9兆8885億円)で、単純年率換算では約2500億ドル(約39兆4907億円)に達する。ただし、同四半期の営業外の税引き前利益約534億ドル(約8兆4352億円)の大半は、AI開発企業アンソロピックへの投資によるものだった。
2026年7~9月期のアマゾンの純利益は207億ドル(約3兆2698億円)だった。アンソロピックへの出資に伴う評価損益は、AWSの顧客がAIサービスを購入することで生じる、継続的な営業利益とは異なる。アマゾンには成長して利益を生むクラウド事業があるが、AI企業への出資の評価額にも業績が左右され、巨額の基盤整備費用も抱える。純利益、クラウド売上高、設備投資を単一の指標にまとめてAIの成功を測れば、実態を見失う。
メタはAIで広告を強化するが、支出と訴訟費用が重荷
メタはAIサービスを直接販売するのではなく、広告の効果やコンテンツの推薦、利用者のサービスへの関与を高めるためにAIを使っている。2026年7~9月期決算では、売上高が前年同期比26%増の646億ドル(約10兆2044億円)となった。広告表示回数は10%増え、平均広告単価も14%上昇した。
設備への支出が営業キャッシュフローを上回った
メタが同四半期に計上した設備投資額は、ファイナンスリースの元本返済を含めて約349億ドル(約5兆5129億円)だった。営業キャッシュフローの約328億ドル(約5兆1812億円)を上回り、フリーキャッシュフローは約21億ドルのマイナス(約3317億円の赤字)となった。AI投資は中核の広告事業を支えているようだが、AIモデルと基盤へのさらに大きな支出が、同じような利益を生むかは分からない。
訴訟関連費用約1兆5623億円はAIの基盤費用とは別
メタの同四半期の営業利益は129億8800万ドル(約2兆516億円)で、前年同期から減少した。費用には、若年層のメンタルヘルスとSNSに関する米国での訴訟の解決に伴う98億9000万ドル(約1兆5623億円)の費用が含まれる。メタによれば、その費用を除いた営業利益は228億7800万ドル(約3兆6139億円)だった。訴訟関連費用による減益と、AIの基盤整備に伴う負担は区別して評価する必要がある。


