アルファベットはクラウド急成長でも資金収支が悪化
グーグルを傘下に持つアルファベットの決算は、AIが既存事業の成長を支えながら、事業で稼いだ現金の多くを基盤整備に振り向ける状況を示している。
Google Cloudは売上高が倍増、TPUの販売も寄与
7月22日に発表した2026年4~6月期決算では、売上高が前年同期比24%増の1198億ドル(約18兆9239億円)だった。クラウド事業「Google Cloud」の売上高は82%増の248億ドル(約3兆9175億円)となった。AI基盤、企業向けAIソリューション、従来型クラウドサービスへの需要が成長を支えた。
10月28日発表の2026年7~9月期決算では、全社売上高が前年同期比25%増の約1276億ドル(約20兆1561億円)だった。Google Cloudの売上高は103%増の約307億ドル(約4兆8495億円)に達した。企業向けAI基盤やAIソリューション、従来型クラウドサービスに加え、AIの計算を高速化するグーグル独自の半導体「TPU」を使ったシステムの販売も売上高に貢献した。Google Cloudの売上高には、継続的に利用料を受け取るサービスだけでなく、半導体を使ったシステムの販売収入も含まれる。
検索やコンテンツに対するAIの影響が議論される中でも、グーグルの中核である広告事業は成長を続けている。検索関連の売上高は2026年4~6月期に前年同期比17%増え、7~9月期も12%増加した。伸び率は鈍化したものの、AIを使ったサービスの拡充によって従来の検索広告事業の成長が止まったわけではない。
四半期の赤字が拡大し、直近12カ月の黒字も縮小
2026年4~6月期、アルファベットが有形固定資産の購入に使った現金は449億ドル(約7兆925億円)だった。営業キャッシュフローの約391億ドル(約6兆1763億円)を上回り、営業利益が前年同期比30%増えたにもかかわらず、フリーキャッシュフローは約59億ドルのマイナス(約9320億円の赤字)となった。
2026年7~9月期には、有形固定資産の購入額が約514億ドル(約8兆1193億円)に増加した。営業キャッシュフローは約423億ドル(約6兆6818億円)で、フリーキャッシュフローの赤字は約91億ドル(約1兆4375億円)へ拡大した。2026年6月末までの直近12カ月では533億ドル(約8兆4194億円)の黒字だったが、9月末までの直近12カ月では約197億ドル(約3兆1119億円)に減った。
アルファベットは営業利益を増やしているのに、基盤への投資が事業から生み出した現金を上回っている。2026年4~6月期には、営業キャッシュフロー1ドル当たり約1.15ドルを設備購入に費やした。7~9月期には設備購入額がさらに増えているため、資金収支への圧力も強まっている。
データセンターは複数年で稼ぐため、短期の赤字だけでは判断できない
一見すると、巨額のAI投資が損失を出しているように見える。しかし、データセンターやサーバーは当四半期だけの売上高を生むためのものではない。複数年にわたって収益を生むと期待される設備であり、購入した設備のすべてがAI専用でもない。
アルファベットの2026年4~6月期の売上高1198億ドル(約18兆9239億円)と営業利益408億ドル(約6兆4449億円)は、事業全体の高い収益力を示す。7~9月期も営業利益は前年同期比30%増の約406億ドル(約6兆4133億円)だった。フリーキャッシュフローの赤字は、計算基盤への支出が現金創出力を上回っていることを示すが、AI事業そのものの損失額ではない。
クラウド売上高にはAI以外のサービスも含まれ、基盤は生成AI以外の処理にも使われる。決算の開示だけでは、AI投資単独の収益率は算出できない。投資家が見極めるべきなのは、アルファベットが巨額の支出をどれほど続けられるか、そして投資がいつ十分な利益と現金を生むかという点だ。グーグルは将来の収益を見込んで、現在、多額の資金を投じている。
保有株式の巨額評価益が次の四半期には評価損に転じた
会計上の利益にも注意が必要だ。2026年4~6月期、アルファベットの「その他の収益」の純額は約980億ドル(約15兆4804億円)だった。主に米宇宙開発企業スペースX(SpaceX)など未上場企業への出資から生じた未実現利益である。保有資産の推定価値が上昇した分であり、顧客から受け取った現金でも、クラウドや広告事業の営業利益でもない。同四半期の純利益は1121億ドル(約17兆7076億円)だったが、営業利益は408億ドル(約6兆4449億円)にとどまった。
2026年7~9月期には、株式投資で約87億ドル(約1兆3743億円)の損失が計上され、「その他の収益・費用」の純額は約82億ドルのマイナス(約1兆2953億円の損失)となった。同四半期の純利益は約262億ドル(約4兆1386億円)だった。株式投資の損益には実現分と未実現分が含まれ、四半期ごとに大きく変動する。
株式の評価損益は、AIサービスの販売やクラウド基盤の運営で得た現金収入とは異なる。利益の大幅な増減に惑わされず、巨大なAI投資が報われているかを判断するには、純利益だけでなく主要事業の営業利益と現金収支を分けて見る必要がある。


