アンソロピックの事業を左右する半導体不足と巨額の長期契約
TSMCは、アンソロピックにとって代わりのきかない供給元の1社だ。エヌビディアやAMDが販売する既製のAI半導体も、アマゾンやグーグルが独自に設計するAI半導体も、アンソロピックが必要とする製品を製造できるのはTSMCだけだ。
アンソロピックのForm S-1には、TSMCが半導体製造能力に対する市場の需要を十分に満たせない時期があったと記されている。TSMCの供給不足により、アンソロピックも必要な半導体を必要な時期に十分な数量だけ調達できないことがあった。
グーグルなど4社との長期契約は約68兆円
供給不足の影響を大きくするのが、計算能力を長期契約で確保するアンソロピックの戦略だ。2026年10月26日提出の届出書には、グーグル、マイクロソフト、アマゾンとの計算能力の利用契約と、ブロードコムとの機器リース契約が記載されている。4社との契約額を合計すると約4300億ドル(約67兆9240億円)に上る。ブロードコムとの契約額は約1610億ドル(約25兆4320億円)で、グーグルが設計したAI処理用半導体「TPU」を使う機器を5年間のファイナンスリースで調達する。
支出約束総額は約141兆円、解約条件は一律ではない
2026年11月2日に提出した修正届出書では、短期の支出約束やリース開始前の契約まで含めた支出約束額が、合計約8954億ドル(約141兆4399億円)に達したと明らかにした。対象は2026年9月30日時点とそれ以降に締結した契約で、約4475億ドル(約70兆6884億円)を2030年末までに、残りのほぼすべてを2031~2045年に支出する見通しだ。4社との長期契約額と、短期契約なども含む支出約束額では集計範囲が異なる。
約2138億ドル(約33兆7724億円)分の契約は、相手方の資金調達、施設の確保、規制当局の承認などの条件が満たされなければ、解約できる場合がある。
ファイナンスリースは、機器を長期間借りる代わりに、契約に基づいて費用を支払う仕組みだ。ブロードコムとのリースは債務不履行が起きない限り途中で解約できない。AI需要、半導体の供給状況、技術に関する見通しが変わっても、アンソロピックには契約上の支払い義務が残る。


