幸福を感じ取れない理由
人は本来、ポジティブな情報よりもネガティブな情報に敏感だ。心理学者はこれを「ネガティビティ・バイアス」と呼ぶ。これは生存のためには安らぎに気づくことよりも、危険に気づくことの方が重要だったために発達したと考えられる。
ストレスはこのバイアスをさらに強める。不安を感じたり、動揺したりしているとき、人の注意は目の前の問題に向かう。その日確かに良い瞬間も訪れているが、心が他のことで一杯になっているため、それを受け止める余裕がない。愛する人と家で一晩中一緒に過ごしていても、後になって思い出すのは、その時に抱えていた心配事だけということもある。
だからこそ、実際にはそうでなかったとしても、振り返ったときに、その日はずっと辛かったように感じられてしまうのだ。グリマー・ハンティングは、その日の辛さを否定するものではない。辛かった部分だけを記憶に留める傾向を是正するものだ。
「グリマー・ハンティング」についてわかっていること
セイバリング(味わうこと)を研究する心理学者は、人がポジティブな経験にどのように注意を向け、その経験をどれだけ長く味わうかを調べている。セイバリングを多く行う人はウェルビーイングが高く、ストレスにもうまく対処できる傾向がある。また、セイバリングは練習によって習得できるものでもあるようだ。
学術誌『Applied Psychology: Health and Well-Being』に2026年に掲載された、20件のランダム化試験の結果を統合した研究では、セイバリングの方法を人々に教えることでウェルビーイングが確実に向上し、気分の落ち込みなどの症状も緩和されることが明らかになった。
心理学者バーバラ・フレドリクソンが提唱した「拡張形成理論」は、ささやかなポジティブな瞬間が、なぜ重要なのかを説明するのに役立つ。フレドリクソンの研究は、たとえ短時間であっても、ポジティブな感情によって人の注意の幅が広がり、柔軟な思考が容易になると示唆している。時間がたつにつれて、こうした瞬間は人生が困難になったときに頼りとなる内的資源を築く助けとなるようだ。ネガティブな感情は注意を脅威へと向かわせてしまう一方、ポジティブな感情はその注意を徐々に広げていく。
その日うまくいったことをいくつか書き留めるなど、ポジティブ心理学に基づく実践も同様の効果を示唆している。学術誌『The Journal of Positive Psychology』に2023年に掲載された、過去の約200件のレビューをまとめた研究では、こうした実践は全体として、気分とウェルビーイングに対して控えめながらも有意義な改善をもたらすことが明らかにされている。


