ウトロに泊まる
知床は、日帰りで訪れる人の多い土地でもある。北海道の統計では、2025年度に斜里町を訪れた人の6割あまりが日帰りで、宿泊客の平均滞在日数もほぼ1泊だった。観光客がその土地に滞在し、地域の魅力を深く味わう。そのためには、宿の存在が欠かせない。
2日目に泊まった「北こぶし知床 ホテル&リゾート」は、ウトロ港に面する宿だ。1960年に5室の旅館として始まり、館内の改装を重ね、いまは「北のネイチャーリゾート」をうたう。ラウンジの飲み物などが宿泊料金に含まれるオールインクルーシブで、流氷を見渡せるサウナもある。
ビュッフェ形式のレストラン「the LIFE TABLE」では、地元の食材をシェフが目の前で仕上げてくれる。料理人たちは自ら生産者を訪ね、ときには食材を獲り、育てることもするという。網走湖産しじみのクラムチャウダー、鹿肉のラグーソースのパスタを食べた。
夕食後、明かりを落としたロビーには、飲み物を手に思い思いに過ごす人たちがいた。その一角に、家具のように大きなJBLのステレオスピーカー「パラゴン」が置かれていた。
穏やかなジャズが流れている。椅子に座り、音楽の心地よさに動けなくなる。酔いも手伝って、どれだけそこに座っていたのかは定かでない。


