車窓を引き立てる、上質な室内空間
走りながら景色に目が向くのは、室内のつくりのおかげでもある。
切り立ったダッシュボードの上を、一枚の大きなガラスが助手席の前まで横切っている。その下にあるのが運転席、中央、助手席の3つの画面を収めたMBUXスーパースクリーンだ。
これまでダッシュボードやメーター、金属のスイッチ、各種パネルが入り組んでいた室内の前方が、新型CLAではガラス板一枚になった。座ったときに目の前に入るものが少なく、そのぶん車内と車外の光景ははっきり二分される。つまり、車窓の景色が直感的に胸に迫るものになるというわけだ。
素材もデザインも質感も、どれをとっても驚くほど上質だった。試乗車にはBurmesterのサウンドシステムも付いていた。脳がバグるようなブレイクコアから、演奏者の指使いまで見えるような静かなピアノ曲まで、どれもよく鳴った。
走っている途中、頭上からの光を左の頬に感じて、空が晴れ渡っているのに気づいた。全車標準の大型パノラミックルーフ越しの光だった。前席から後席の頭上まで、ひと続きのガラスが広がっている。
午後は、屈斜路湖でカヌーに乗った。山手線の内側よりも広いその湖に浮かんでいるのは、筆者たちのカヌーだけだった。そこから、湖を出ていく唯一の川である釧路川の源流へこぎ出す。
源流と聞くと、岩のあいだを落ちる急流が思い浮かぶが、釧路川の源流は流れているのかどうかもわからないほど穏やかで、川底の砂が見えるくらい水が澄んでいた。犬と人を乗せたカヌーが、魚や川エビと一緒にくだっていく。
カヌーを降りて、宿のある中標津町の養老牛温泉へ向かうと、景色は牧草地に変わる。
途中で頭が痛くなり、人に聞くのと同じ言葉で「ドラッグストアない?」とクルマに話しかけた。痛み止めは、ちゃんと買えた。慣れないクルマで地味に面倒な空調も、「2℃下げて」と言えば、そのとおりに温度が変わる。
声の頼みごとが一度で通らないこともあったが、言い直せば画面に触れることなく用は済んだ。ハンドルから手を離すことも、メニューを探して視線を前から切ることもない。
操作のことを考えなくてよくなったぶん、目は窓の外に向かう。北海道の大きな自然のなかに、人の手で整えられた美しさがあった。
根釧台地は、明治の入植から百年あまりをかけて拓かれた土地だ。冷害に阻まれて畑作から酪農へ転じ、戦後は原野を牧草地に変えてきた。格子状に続く防風林も、その歴史を物語る。かつての開拓者たちは、この自然とどう向き合っていたのだろう。


