ベンチャーキャピタルの次なる波
ただし、ここには落とし穴がある。ベンチャーキャピタルとメディアには根本的に異なるスキルセットが求められるのだ。従来型のベンチャーキャピタルは資金調達や追加の資金調達ラウンド、企業との関係構築、機関投資家について熟知している。一方、文化的に影響力のあるメディアブランドや、本物のクリエイターコミュニティを構築するには、ストーリーテリングやオーディエンス、注目度といった分野における異なるスキルセットが必要となる。
新たに生まれつつある機会は、単にベンチャーキャピタルがメディア企業になったり、クリエイターが投資家になったりすることではない。ベンチャープラットフォームが両方の世界に精通することだ。ベンチャーキャピタル、メディア、クリエイターが融合するにつれ、ディストリビューションはベンチャーキャピタルの周辺的な存在からその中核へと移りつつある。
だからといって資本が重要でなくなるわけではない。ディストリビューションの力でも悪い会社を救うことはできない。優れた投資には判断力や確信、そして卓越した創業者を識別する能力が求められる。だがベンチャーキャピタルの付加価値の定義は変わりつつある。
歴史的に見れば、最も重要なベンチャーキャピタルの組織は、創業者が必要としていながら自力では簡単に手に入れられないものを中心に構築されてきた。今日では情報は豊富にあり、ソフトウェアは安くなっている。スタートアップ教育は至るところで受けられ、資本そのものも入手しやすくなっている。しかし、注目や信頼は依然として得にくい。
だからこそ、現在ベンチャーキャピタル業界全体で起きている動きは重要なのだ。老舗の企業はメディア事業を展開し、クリエイターは投資家となりつつある。新しいプラットフォームは最初からその仕組みの中にディストリビューションを組み込んでいる。これらは別々のトレンドに見えるかもしれないが、次第に同じ結論へと向かっている。
Y Combinatorは教育を軸に構築された。ベンチャースタジオは運営インフラを軸に構築された。次の偉大なベンチャープラットフォームはディストリビューションを軸に構築されるかもしれない。この仮説が正しいことが証明されれば、ベンチャーキャピタルの未来は、金融というよりはメディアに近いものになるかもしれない。それがどのように展開していくのか、その動向から目が離せない。


