ネットフリックスは従来型のテレビ局ではなく、動画配信アプリを付け足した映画スタジオでもない。同社のビジネスモデルはむしろコストコと共通点が多い。両社はいずれも会員権を販売しており、その戦略の多くは、顧客が料金を払い続けるだけの価値を会員権に持たせることを軸にしている。
長年にわたって米エンタメ業界はネットフリックスを、従来型のテレビ局や映画スタジオと同じ基準で評価してきた。すなわち、その番組はヒット作なのか。なぜシーズンがこれほど短いのか。なぜネットフリックスはもっと多くの映画を劇場公開しないのか。毎週1話ずつ配信すれば視聴者を呼び戻し続けられるのではないか。そして、熱心なファンはいるが比較的小規模な支持層にとどまる作品を、なぜ同社はこれほど簡単に打ち切るように見えるのか、といった問いだ。
これらはもっともな問いである。しかし多くの場合、出発点となる前提が間違っている。この非伝統的なモデルを理解すれば、ネットフリックスの番組編成上の判断、財務上の優先順位、そして動画配信市場が成熟するなかで同社が直面する課題の多くが見えてくる。同時に、より複雑な問題も浮かび上がる。ネットフリックスをサブスクリプション型動画配信サービスの圧倒的存在に押し上げた事業慣行は、その地位を維持するには十分ではないかもしれないのだ。
ネトフリの「コストコ戦略」は成長を支え続けられるか
従来型のテレビ局や映画スタジオは、歴史的に個々の作品を独立した経済的案件として扱ってきた。スタジオは映画に資金を投じ、宣伝し、さまざまなウィンドウ(公開順序)を通じて配給し、投資回収を目指す。テレビ局は視聴者を集め、広告を売り、ケーブルテレビ時代にはチャンネルの基本料金を正当化するために番組を開発してきた。
ネットフリックスは異なるやり方で運営している。同社の主たる目的は、加入者を獲得し、契約を継続させ、各アカウントから生み出される収益を増やし、その目標を達成するためのコストを管理することにある。これは会員制ビジネスの論理である。
たとえばコストコは、特定の商品について比較的低い利益率を受け入れることがある。そうした商品が、顧客に会員資格を更新させ、店内の別の商品にお金を使わせるうえで役立つからだ。コストコ名物のロティサリーチキンの価値は、そのチキン単体の利益だけで判断することはできない。より大きな顧客関係への貢献のほうが重要である。
ネットフリックスは、エンターテインメントに同様の計算を適用している。膨大な視聴者数を稼ぐ番組であっても、新規の加入者を惹きつけられるか、Netflixがつなぎ止めたい層に響くか、既存会員の解約を防ぐ理由になるか、という条件を満たさなければ、あまり視聴されていない番組よりも価値が低い場合がある。逆に、熱狂的なファンを持つシリーズであっても、そのファン層があまりに少なく、制作コストに見合わなければ、やはり投資対効果の低い番組といえる。
重要な問いは、単に番組が成功したかどうかではない。その番組が、サブスクリプション事業の成功に寄与するかどうかだ。これは顧客生涯価値(LTV)の考え方であり、顧客との関係が続く期間に見込まれる経済的価値を意味する。
簡略化したモデルでは、「1アカウント当たりの平均収益×粗利益率÷解約率(チャーンレート)」で表される。実際の計算はより複雑だが、根底にある原則は明快である。より多く支払い、獲得コストが低く、より長く契約を継続する顧客は、一般に価値が高い。この原則を理解すると、一見矛盾して見えるネットフリックスの判断の多くが説明しやすくなる。



