またこの意識は、双方の気分が密接につながっていることに気付くためにも役に立つ。長期的な関係では、この影響が特に顕著になることがある。一方が仕事でストレスの多い時期を過ごしていると、もう一方も気づかないままに、気分が落ち込んだりイライラすることがある。
だからこそ幸福度の低下は、一方だけの問題ではないことが多い。「2人の間で何が上手くいかなくなったのか」と尋ねるよりも、一方が何かに悩んでいないか、その悩みが2人にどのような影響を及ぼしているのかを問うほうが、そのカップルにとっては有意義かもしれない。
2. 仲の良さは必ずしも健全さを意味しない
2つ目の知見は、一般的な認識を少し複雑にするため、やや受け入れ難いものかもしれない。幸せな関係にある人は、平均的にはより高いウェルビーイング(心身の健康や幸福)を報告しており、長期的な健康状態も良好な傾向にある。パートナーから安心感や支えを得られていると感じると、体内でストレスがより効果的にコントロールされるようになるからだ。
だが、そうした恩恵が必ず得られるとは限らない。長年一緒に暮らすうちにカップルは、睡眠、食事、運動に関して似たような習慣を身につける傾向がある。心理学者はこれを「健康行動の一致」と呼ぶ。カップルの共有する習慣が健康的なものであれば、この一致は2人にとってプラスに働く。その習慣が不健康なものであれば、気づかないままその習慣を助長し合っている可能性がある。
毎晩ソファでテイクアウトの食事を食べながら夜更かしするカップルを考えてみてほしい。2人にとってこの時間は、1日の中で最も楽しいひとときの1つかもしれず、実際に2人の絆を深めている。だが、それがあまりにも心地良いため、2人ともその習慣に疑問の目を向けにくい。たとえその結果として2人とも日常的に睡眠不足になり、食生活が悪化していたとしてもだ。学術誌『Brain, Behavior, and Immunity』に2026年に掲載された研究は、共有される習慣が不健全なものだと、幸せな関係と生物学的な加齢の遅延との間に存在する老化防止効果が弱まり、場合によっては逆に悪影響を及ぼす恐れがあるという証拠を示している。
これは、カップルが2人の距離を縮める習慣をやめるべきだという意味ではない。感情的な質と実際の習慣は別物であり、カップルは強い絆を感じつつも、自分たちの習慣が健康に及ぼしている影響を見過ごしてしまう可能性があるということだ。長期的に良好な関係を維持しているカップルは、互いの健康を日常的な方法で支え合うことを意識しており、その結果、より健康的な選択が、2人の共有生活のごく自然な一部になっていることが多い。


