企業マスコットが再び注目され、広告での記憶効果も評価されている
マスコットをブランドの顔にする手法は新しくない。シリアル食品ブランド「クエーカーオーツ」の商品パッケージに描かれた男性キャラクター「Quaker Man」が代表例だ。タイヤメーカー「ミシュラン」の「ミシュランマン」、ウイスキーブランド「ジョニーウォーカー」の「ストライディングマン」も古くから知られている。
近年、企業のマスコットは再び存在感を増しているようだ。デュオリンゴの奇抜なフクロウはブランドの知名度を高め、アップルもMacのファイル管理アプリ「Finder」の顔アイコンを立体的なキャラクターにした。パソコン「MacBook Neo」の宣伝に登場したマスコットは、ファンから「Lil’ Finder Guy」という愛称で呼ばれている。
市場調査会社イプソスによると、マスコットや特徴的なキャラクターを使った広告は、使っていない広告と比べて記憶に残る可能性が6倍高い。マスコットの復活は、もっと大きな文化の変化を象徴する。「カワイイ」は一部の愛好家の文化から、世界で主流となる美意識と人々の熱中の対象へと変わった。動きを主導しているのは10代ではなく、大人だ。
日本発の「カワイイ」文化は、国境を越えて大人の消費市場に浸透した
「カワイイ」文化と関連市場の源流は、戦後の日本にある。1970年代後半には、10代の少女の間で、丸みを帯びた手書き文字「丸文字」が流行した。1980年代になると、パソコン通信などで文字や記号を組み合わせて表情を表す「顔文字」も使われ始めた。
1999年にはNTTドコモが176種類の絵文字を提供した。現在「ガラケー」と呼ばれる従来型携帯電話で使われた絵文字は、顔の表情や天気などを小さな図柄で示し、文字だけでは伝えにくい感情も表現できるものだった。
文字や絵を使った身近な自己表現は、やがて世界に広がる「カワイイ」文化へと発展していく。ハローキティなどのブランドには、日本発の「カワイイ」という美意識が息づいている。
韓国のエギョやディズニーに熱中する大人にも見られる共通点
韓国では子どものように愛らしく振る舞う「エギョ(애교)」という表現が生まれ、K-POPを通じて広く知られるようになった。欧米には、ディズニーのキャラクターに熱中し、グッズを集め、テーマパークへ定期的に足を運ぶ大人がいる。キャラクターを楽しむことは、大人にとって生活様式であり、現実から気持ちを解放する手段でもある。米国では2026年上半期、成人だけで構成される世帯による購入が玩具販売の55%を占めた。
大きな目や丸い顔は、なぜ人間の養育本能を刺激するのか
人が愛らしいものに心を引かれる理由については、進化論からも説明できるとする説もある。オーストリアの動物行動学者コンラート・ローレンツが唱えた「ベビースキーマ」説によれば、人間は大きな目、丸い顔、柔らかな特徴といった乳幼児の姿に、生まれつき好意的に反応する。人類が生き延びるために発達させてきた、子どもを守り育てようとする本能が自動的に働くためだ。
オックスフォード大学の研究によると、愛らしさは感情や快楽に関係する脳のネットワークを自動的に活性化させ、共感や思いやりを引き出す。大人になる道筋が定まらない「リキッド・アダルトフッド(Liquid Adulthood)」の時代には、「カワイイ」ものが安心感や安らぎ、温かさを与える。メタがマスコットを「Jolly」と名付けたのもうなずける。


