「5月の朝6時、1日の準備をする昆虫たちの撮影を終えて、家に帰ろうとしていた時だった」と、リー・フロストは話す。「眠そうなルリイトトンボが、ゆっくりと葉っぱを登ってきて、開いていた窓から顔をのぞかせた。シャッターを押した瞬間には、陽気に手も振ってくれた」
突然目が覚め、あと5分で始業時間だと悟って完全なパニックに陥ったことはないだろうか。このおどけた表情の裏側には、水中で粘り強く待ち続けた忍耐の物語がある。このギンポ(小型の海水魚)の写真は、サンゴにカモフラージュした小さな管のなかに隠れていて、餌を食べるためにほんの一瞬、口を開けた時の1枚だ。
ヘルゴラント島に撮影旅行に出かけた際、ヤン・ヴィットマーはこのキクイタダキを初めて目にし、「一目ぼれ」した。
キクイタダキは、欧州に生息する最も小さな鳥で、餌を求めて地面を歩き回っていた。ヴィットマーは地面にカメラを据え、どきどきしながら、この小鳥が絶えず行ったり来たりしている様子を観察していた。すると思いがけず、小鳥がぴたっと立ち止まり、カメラをまっすぐに見つめた。その一瞬をとらえたのがこの写真だ。
南アフリカ共和国のアドゥー・エレファント国立公園で暮らすこの雄のゾウは、絶対的な自信を胸に、群れの方へとゆっくり近づいていった。ところが、あと20ヤード(約18m)というところで、鼻をひょいと持ち上げて目に当て、身を隠すと、ゆっくりと、しかしぎこちなくUターンした。
そんなつもりはなかったのだろうが、鼻先を目に当てた時には、小さな子どものような心理が働いたように見える。「僕には君が見えないんだから、君にも僕は見えないはず」と。


